研究実績の概要 |
幼少期の逆境的体験と職場における好ましくない行為に関して、インターネット調査を実施した。 まずスクリーニングを行い、就業状況、部下の人数、過去3年間の部下に対する好ましくない行為の有無(17項目、複数回答)について、20歳以上の30,000人から回答を得た。サンプルの属性は、女性42.5%、平均年齢45.1歳、最年長90歳であった。調査前1週間に仕事をしたのは、90.3%、そのうち指揮・命令している人が1人以上いたのは、49.6%であった。その中で、好ましくない行為を1つ以上行った経験があったのは、15.3%であり、行為別では、「業務の相談をしている時、パソコンに向かったままで視線を合わさない」が4.3%、「部下のミスについて「何をやっている!」と強い調子で叱責する」が3.8%、「仕事を進める上で必要な情報を故意に与えない」が1.8%、などとなっていた。 続く本調査では、職場でのパワハラ被害・目撃・行為の有無、職場のパワハラ対策の有無、職業性ストレス、職場のソーシャル・キャピタル、精神的健康度、自殺念慮、自尊感情、攻撃性、共感性、幼少期の逆境的体験、学校でのいじめ体験などについて尋ねた。幼少期の逆境体験については、東京都足立区による「子どもの健康・生活実態調査」における調査項目のうち9項目に関し頻度を尋ねた。サンプルを、好ましくない行為の該当数により、3群に分類し(17項目中0、1、2以上、それぞれ84.7%、9.9%、5.4%)、各群の309人から回答を得た。その結果、幼少期の逆境体験スコアは、好ましくない行為が0の群では、平均4.24(SD 4.45)、1種類の群では、平均6.51(SD 6.14)、2種類以上の群では、平均9.34(SD 6.49)で、幼少期の逆境体験スコアが高いほど、より多種類の好ましくない行為を行っていた傾向がみられた(傾向検定 p<0.001)。
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