研究課題
本研究は自律神経系機能の低下と耐糖能の悪化、もしくは糖尿病発症との関連を前向き研究により検討することを目的とする。対象は、愛媛県O市とT市において、2009年から3年間(T市は4年間)かけて実施したベースライン調査実施者合計約5600名とした。対象者全員に対して自律神経系機能の指標となる心拍変動を5分間測定し、自律神経系機能の指標となるSDNN、RMSSD、LF、HF、LF/HF比を測定した。T市においては、75gブドウ糖負荷試験を実施し、心拍変動とインスリン抵抗性ならびに感受性との関連をみた。本年度は、横断的な検討として、T市において、心拍変動とインスリン抵抗性、ならびに高感度CRPとの関連について検討を行った。また、T市における2010年度受診者の5年後追跡調査を行い、2009年度と2010年度合わせて788名について実施できた。T市におけるこの間の糖尿病発症率は5.7%であった。SDNN、RMSSD、HFの各指標の低下とLF/HF比の増加はHOMA-IRならびにインスリン感受性と有意に関連した。これらの関連は非肥満者で明らかであった。LF/HF比とインスリン感受性の間に、肥満の有無で交互作用を認め、非肥満者では、LF/HF比の最も高い四分位のインスリン感受性低下に対するオッズ比が2.09倍と有意に上昇した。高感度CRPの上昇に対しても非肥満者においてSDNN、RMSSD、LF、そしてHF低下と有意な関連を認めた。心拍変動の低下、特に副交感神経系機能の低下は、インスリン抵抗性・インスリン感受性、さらには慢性炎症の指標である高感度CRPの上昇に関連しており、自律神経系を介したインスリン機能の低下、あるいは慢性炎症を惹起する系の存在が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
初年度に予定していたサンプルサイズは概ね収集できた。
研究対象者約5600名の内、約3000名の追跡情報を得ることができた。平成28年度にさらに1000例近くの対象者の調査を行い、分析を行う予定である。研究計画は概ね予定通りに進んでおり、現在障害となる課題などは見当たらない。研究成果についても学会発表や論文執筆をしていく予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Atherosclerosis
巻: 244 ページ: 79-85
10.1016/j.atherosclerosis.2015.10.112
J Epidemiol
巻: 25 ページ: 583-91
10.2188/jea.JE20140254