研究課題/領域番号 |
26460774
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研究機関 | 弘前医療福祉大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰博 弘前医療福祉大学, 保健学部, 教授 (60621109)
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研究分担者 |
對馬 均 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (10142879) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 手根管症候群 / スクリーニング / 社会医学 / 予防医学 / 集団検診 / 有病率 |
研究実績の概要 |
研究成果を学会発表し,学術誌に論文投稿して掲載された.論文要旨は,以下の通りである. 手根管症候群(以下,CTS)の早期発見のために作成したスクリーニング・ツール(以下,自己チェックシート)を使って,精密機械工場の従業員を対象としたCTSの有病率調査を実施した.調査の結果,①従業員の9.4%に手に何らかの自覚症状があったこと,②CTSの有病率は0.68%(男性 0.50%, 女性 1.36%)であったこと,③性別と国際職業分類で層化した場合,女性技師が最も高い有病率であったこと(2.63%),④本調査による女性のオッズ比は4.92であることがわかった.先行研究におけるCTSの有病率は2~4%とされていることから,調査対象とした職種と関連してCTSを発症している可能性は低いことが示唆された.そのため本邦における精密機械工場でのCTSの発見には,職種よりも女性割合に注意して健診することが重要になると推察された.さらに本調査でCTSと診断された患者の多くは,病院未受診であった.このことは,自己チェックシートがCTSの発見に有用であることを示唆している.また,自己チェックシートが企業健診や自覚症状があっても病院受診していない地域住民においても有用となる可能性がある. 一方,今回の調査では,新たな課題も明らかとなった.調査の結果,頚椎疾患や肘部管症候群なども多く含まれていた.これは,自己チェックシートが上肢疾患のスクリーニング・ツールとしても有用である可能性と共に,CTSのスクリーニング・ツールとしての感度と特異が高くならないことを示唆している.このことは自己チェックシートを集団健診等で使用した場合,精査を必要とする対象者が多くなることを示している.そのため,CTSに次いで多かった頚椎疾患との鑑別の可能性を探るために,新たな研究データの収集を平成27年11月から開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精密機械工場におけるフィールド調査の結果を研究成果として,学会発表し,論文として掲載された.本研究課題の当初の研究計画ではフィールド調査において作成した自己チェックシートの有用性検証までであったことから,研究計画通りに進めることができた.しかし,フィールド調査によって明らかとなった新たな課題に対する追加研究が必要となった.現在,手根管症候群と頚椎疾患の鑑別のための追加の研究データを医療機関で収集しているが,予定通りに集まっていない.加えて追加のフィールド調査の実施も予定しているが,協力企業が現時点では得られていないことから「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後,現在実施している医療機関における手根管症候群と頚椎疾患との鑑別データの収集を継続する.また,追加のフィールド調査についても手根管症候群の有病率が高いとされる職種を軸に対象企業の絞り込みと交渉を継続していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた神経伝導検査機器(日本弘電社,ブレビオ)が平成26年末に販売終了となった.このため代替えの機器購入の選定と価格交渉に時間を要することとなった.また,現在販売されている機器は,当初購入予定としていた機器より高額となることがわかった.そのため研究に関する情報収集のための学会出張を控える必要があり,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
研究に関する情報収集のための学会出張の費用と,追加のフィールド調査における交通費やデータ入力のための人件費に使用する予定である.
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