研究課題
本研究では岩手県北・沿岸地域住民を対象とした大規模コホート研究(岩手県北地域コホート研究)のデータを基盤として、生存者24471人(津波被災地域15904人、内陸地域8567人)についての震災前後のレセプトデータを収集することで、被災後の受診頻度の変化を明らかにし、震災前後の受診頻度の変化が震災後の循環器疾患は死亡リスクに及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。平成26年度は岩手県北地域コホート研究の追跡調査を実施した。すなわち、厚生労働省の承認を受け、域内の3保健所(二戸、宮古、久慈)で死亡小票閲覧による死因調査を実施した。研究参加者のうち平成24年1月1日から平成24年12月31日までに死亡した者は388人(二戸地域177人、宮古地域146人、久慈地域65人)であった。平成24年3月12日から平成24年12月31日までの間に死亡した参加者は総数で585人(二戸地域233人、宮古地域224人、久慈地域128人)であり、震災後の累積死亡率(人口10万人対)は、津波被災地域(宮古地域、久慈地域)では221、内陸地域(二戸地域)では271であった。地域発症登録データを用いて平成24年12月31日までの循環器疾患(脳卒中および心疾患)の罹患状況、及び行政情報を用いて介護認定状況を調査した。現在、これらのアウトカムデータを統計解析に用いることができるよう編集を行っているところである。一方、診療報酬明細情報の収集は平成23年2月まで終了しているが、震災以降の情報収集は未着手であり、震災後の受診頻度の変化を明らかにするに至っていない。
3: やや遅れている
平成26年度は本研究の基盤となる岩手県北地域コホート研究の追跡調査、すなわち死因調査、循環器疾患発症調査、介護認定情報調査を行った。これによって本コホート研究の追跡期間は平成24年12月31日まで延長され、平均追跡期間は約8年となった。平成26年度の追跡調査によって、本研究の目的である震災後の循環器疾患発症および死亡リスクの検証を行うための基盤が構築されたと考えられる。一方、診療報酬明細情報の収集については平成26年度内に対象市町村と交渉を行うなどして、情報収集の体制を構築する予定であったが、前述の追跡調査を主として行ったため、十分に進捗したとは言えない。したがって、全体として研究目的の達成度を「やや遅れている」と評価した。
平成26年度の追跡調査の実施によって、岩手県北地域コホート研究の追跡期間は平均8年まで延長された。今後も追跡調査を継続するとともに、現在までに集められたアウトカム(死亡、死因、循環器疾患発症、介護認定情報)のデータを統計解析に用いることができるようデータ編集を行う。また曝露要因として設定している震災後の受療頻度に関するデータ(診療報酬明細情報)の収集に着手する。
平成26年度に予定していた診療報酬明細情報収集の進捗が十分ではなかったこと、及び成果公表として国外学会での発表を計画していたが、これを実施しなかったため、次年度使用額が生じた。
平成26年度に実施できなかった診療報酬明細情報の収集、及び国外学会での成果公表の費用として用いる。
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