研究実績の概要 |
本研究では岩手県北・沿岸地域住民を対象とした大規模コホート研究(岩手県北地域コホート研究)のデータを基盤として、東日本大震災・津波生存者のレセプトデータを収集することで、被災後の受診頻度の変化を明らかにし、震災前後の受診頻度の変化が震災後の循環器疾患発症及び死亡リスクに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 平成28年度までに、対象12市町村(二戸市、軽米町、一戸町、九戸村、久慈市、洋野町、野田村、普代村、宮古市、岩泉町、山田町、田野畑村)の住民異動調査を実施した。また、対象12市町村の介護認定情報を収集した。また全対象地域の循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞)発症調査を実施した。対象者のうち市町村国保加入者の平成23年2月までの診療報酬明細情報の収集を行った。 研究対象者26,469人のうち、平成26年12月までの追跡期間中の総死亡数は2,838人であった。死亡時期による死亡数の内訳は、登録から平成23年2月まで(T1)の死亡は1,565人、平成23年3月(東日本大震災発生月)の死亡は231人、平成23年4月から平成24年12月まで(T2)の死亡は587人であった。T1の死亡率(1000人年対)は、沿岸部男性13.6、内陸部男性17.0、沿岸部女性4.1、内陸部女性6.0であった。登録時の年齢構成を基準人口としたT2の年齢調整死亡率は沿岸部男性12.4、内陸部男性18.1、沿岸部女性3.6、内陸部女性5.2であった。同じく登録時の年齢構成を基準人口としたT2の標準化死亡比(95%信頼区間)を求めたところ、沿岸部男性0.87(0.74, 1.01)、内陸部男性1.16(0.997, 1.35)、沿岸部女性1.03(0.87、1.22)、内陸部女性0.95(0.80, 1.15)であった。本研究の対象者では東日本大震災前後の総死亡率に大きな変化は認められなかった。
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