研究課題/領域番号 |
26460779
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
木庭 新治 昭和大学, 医学部, 准教授 (20276546)
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研究分担者 |
横田 裕哉 昭和大学, 医学部, 助教 (00465105)
正司 真 昭和大学, 医学部, 助教 (50384392)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 必須アミノ酸 / 脂肪酸 / 急性冠症候群 / 食物摂取頻度調査 / 魚介類 / トリプトファン / コレステロール / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
方法:現在までに測定終了した対象者は急性冠症候群で緊急入院した患者とボランティアで募集した40歳以上の健康男性である。健康男性の最高齢が79歳であり、急性冠症候群群は、緊急入院時に緊急冠動脈カテーテル手術を施行した80歳未満の連続患者を採用した。緊急冠動脈造影検査直前に静脈血を採取し、血清と血漿を分離した。対照群は、ボランティアで募集した男性の空腹時採血の検体を用いた。健康男性の中で、血糖高値で糖尿病が疑われた例を除外した25人のデータを採用した。血漿中の脂肪酸をガスクロマトグラフィーで、アミノ酸を高速液体クロマトグラフィー質量分析計で測定した。群間比較はMann-Whitney U検定で解析した。 結果:急性冠症候群患者は94人(男性83人)で、冠血行再建術の既往20人、心筋梗塞の既往13人、高血圧59人(降圧薬服用者41人)、糖尿病21人(インスリン治療中3人、経口糖尿病薬服用中10人)、喫煙習慣(現在49人、過去25人)、抗血栓薬服用者22人、脂質低下薬服用者22人であった。 総アミノ酸は両群間で同等であったが、必須アミノ酸が急性冠症候群で有意に低く、特に、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンが有意に低値であった。総コレステロールとLDLコレステロールは同等であったが、HDLコレステロールは急性冠症候群で有意に低値であった。脂肪酸組成ではアラキドン酸は両群で同等、急性冠症候群でエイコサペンタエン酸(EPA)が低値傾向、ドコサヘキサエン酸(DHA)、EPAとDHAを併せたω3系多価不飽和脂肪酸濃度が有意に低値であった。 食事摂取頻度調査票(DHQL)を急性冠症候群患者41例で実施した。現在解析中である。 考察:急性冠症候群発症時には、一部の必須アミノ酸が健康人に比し、明らかに不足していた。その成因を今後継続して調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
食事摂取頻度調査票(DHQL)の回収が当初の予定よりも遅れている。その要因として以下のことが挙げられる。認知機能の低下した患者ではDHQLの実施が困難である。高齢者ではDHQLの回答に1時間以上要するため、致死性心疾患入院直後では数日を必要とする。DHQLの回答で欠損値が1項目でも存在した場合には解析不可能のため、回収したDHQL結果の全例での解析が困難である。そのため、研究参加に同意した患者の60%以下の症例でのDHQL回収である。DHQLの回収が退院時期となる症例が多く、回答の欠損値を発見した際には、次回の外来受診時に再調査の修正を試みている。研究の精度上、DHQLの実施が必須項目であるため、今後も継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
入院後の研究同意は順調に取得できている。しかし、研究の進捗が遅れている理由は、患者のDHQLの回答能力に依存していることである。認知機能の低下患者や抑うつ気分の強い患者ではDHQLの実施が困難である。対象患者の大多数は65歳以上であり、現在、認知機能と抑うつ状態も併せて評価している。入院中に管理栄養士による個別栄養相談を実施しているが、その実施日までDHQLの回答が完了していない患者が多い。現在、個別栄養相談日までにDHQLの回答を促し、その際に、管理栄養士がDQLの回収を行うように努めている。本研究の遂行には、研究担当医だけでなく、主治医、看護師、管理栄養士、理学療法士の多職種の連携が必要であり、現在週1回、多職種カンファレンスを実施し、研究の進捗状況を認識するように努めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
同様の研究課題で、伊藤記念財団の平成26年度研究助成を獲得できた。本研究のアミノ酸分析の費用の半分以上を伊藤記念財団の研究費で支払いしたため、当初の予算を軽減できた。現在ある血液検体未測定分とDHQL未解析の測定費用分として使用致します。 現時点で有意な結果が得られてきており、2015年では、学会発表、論文発表を計画している。2014年11月他の研究発表で米国心臓病会議に参加した際、米国の栄養学の第一人者のタフツ大学Lichtenstein教授と本研究に関して詳細に検討を行った。その旅費処理が完了していない。本年度もLichtenstein教授と8月の欧州心臓病会議または11月の米国心臓病会議に併せて検討する場を設ける予定である。そのための旅費費用として予算に計上する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
アミノ酸、脂肪酸分析を終了した症例の一部はDHQLの実施が困難であり、最終解析から除外される。DHQLの評価数を増やすため、今年度はさらに症例数を増加する予定である。次年度繰り越し額により、症例増加が見込めるため、2015年度の十分な解析が期待できる。 8月の欧州心臓病会議、11月の米国心臓病会議に参加する旅費として70万円を計上する。
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