研究実績の概要 |
50歳以上の急性冠症候群(ACS)男性患者122例と疾病および服薬歴のない50歳以上の健常な非喫煙男性25例の採血前1ヶ月間の食習慣を自記式食事歴質問票を用いて比較検討した。両群において年齢、BMI、LDLコレステロール(LDL-C)は両群間で同等であった。ACS群でHDL-Cとエイコサペンタエン酸(EPA)は有意に低値、ドコサヘキサエン酸(DHA)低い傾向であった。栄養素では、摂取エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物摂取量は両群で同等であったが、ACS群でカリウム、カルシウム、鉄、コレステロールは有意に低値、n3系多価不飽和脂肪酸(n3-PUFA)は少ない傾向であった。食品群別摂取量では、ACS群で砂糖類、菓子類、油脂類は有意に多く、いも類、緑黄色野菜、その他の野菜、卵類の摂取量は有意に少く、魚介類は少ない傾向であった。ACS発症直前の食習慣は健康人と同等のエネルギー摂取量であったが、魚介類、n3-PUFA、野菜類、いも類、卵類の摂取量が少なく、砂糖類、菓子類、油脂類の摂取量が多いことを示した。 40-80歳の健常男性とACS男性66例の血中脂肪酸組成を比較した。総脂肪酸量および総トランス脂肪酸量は両群で同等であった。パルミトエライジン酸(C16:1, 天然型トランス脂肪酸)はACS群で有意に低く(0.17 ± 0.06 vs 0.20 ± 0.06%、p<0.01)、その濃度はHDL-Cおよびn-3 PUFAと正相関を示した。トランス型リノール酸(C18:2 Trans, 工業型トランス脂肪酸)はACS群で有意に高値であった (0.68 ± 0.17 vs 0.60 ± 0.20%)が、トランス型オレイン酸(C18:1, 工業型トランス脂肪酸)は同等であった。中高年のACS患者では 天然型トランス脂肪酸が有意に低値であった。
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