研究課題/領域番号 |
26460781
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
齋木 厚人 東邦大学, 医学部, 講師 (70338854)
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研究分担者 |
龍野 一郎 東邦大学, 医学部, 教授 (80282490)
白井 厚治 東邦大学, 医学部, 名誉教授 (00150269)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会医学 / 血管機能検査 / CAVI / 冠動脈イベント / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
わが国で開発された新しい血管機能検査CAVI(Cardio-ankle vascular index)は、これまでの血管機能検査が有していた血圧依存性や測定の局所性の問題を解決したことで、血管固有の硬さが分かるようになり、また糖尿病、肥満、高血圧、喫煙などのリスクでCAVIが高くなることから、今後の研究成果が期待される検査法である。本研究は、CAVIの高低をみることで将来の動脈硬化性疾患のイベント発生を予測できるかどうか、リスクを有する3000例の患者群で5年間の前向きイベント調査を行うものであり、初年度の平成26年度は観察開始時のリスクとCAVIの関連(断面調査)、1000例のイベント調査が計画された。 冠動脈イベントは9.0%で発症し、発生した群のCAVIは9.86で、そうでない群の9.19より高かった(p=0.0002)。Coxの比例ハザードモデルでは男性、糖尿病、高血圧、低HDL-C、喫煙とならび、CAVIも冠動脈イベントの予測因子であった。CAVIが1上昇するごとの冠動脈イベント発生リスクは1.13倍であった。冠動脈イベントの累積発生率は、CAVI9以上の群はそれ以下の群より高かった(P=0.0014)。以上より、CAVIの高値は冠動脈イベント発症の独立した予測因子であると思われた。 平成26年度の成果は、数回の国内学会で発表され、またCAVI Now & Future誌(VOL.3 page.29-33)に論文発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の平成26年度は観察開始時のリスクとCAVIの関連(断面調査)、1000例の5年間の前向きイベント調査が計画された。 当初の予定通り1000例の解析が行われた。本検討の観察期間中に、新規の冠動脈イベントを発生した症例は90例(9.0%)であった。イベントを発生した群ではそうでない群と比較して、男性比率、年齢、喫煙率、糖尿病有病率、高血圧有病率、血糖、HbA1c、総コレステロールが高く、HDLコレステロールが低かった。新規に冠動脈イベントを発生した群のCAVIは9.86と、そうでない群の9.19より高値であった(p=0.0002)。Coxの比例ハザードモデルでは男性、糖尿病、高血圧、低HDL-C、喫煙とならび、CAVIも冠動脈イベントの予測因子であった。CAVIが1上昇するごとの冠動脈イベント発生リスクは1.13倍であった。冠動脈イベントの累積発生率は、CAVI9以上の群はそれ以下の群より高かった(P=0.0014)。新規冠動脈イベント発生に対するCAVIのカットオフ値をROC曲線で解析したが、これについては明確なカットオフ値を導き出せなかった。 1000例までの中間報告ではあるものの、CAVIの高値は冠動脈イベント発症の独立した予測因子として十分なものと考えられ、当初の計画以上に進展していると思われた。この平成26年度の成果は、数回の国内学会で発表された。また以下の英文論文発表(国内紙)も行われた。 Atsuhito Saiki, et al. CAVI as an Indicator of Coronary Events: A Prospective Study. CAVI Now and Future 3, 29-33, 2014
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、全3000症例を対象に、エンドポイントの評価を行い、さらに糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、腎障害、喫煙歴といった各リスクや、治療法の違いによるイベント発生についてのサブ解析を行う計画としている。しかしながら平成26年度の成果として「11.現在までの達成度」でも述べたように、1000例までの解析でもCAVIの高値が冠動脈イベント発症の独立した予測因子として十分な成績が出されており、症例数の目標については下方修正される可能性もあるが、現在当初の計画以上に進展しており、CAVI値による将来の動脈硬化性疾患のイベント発生予測について、十分な成果が期待できるものと思われる。 平成27年度は、数回の国内学会発表に加え、国際学会での発表も計画し、また国際誌への投稿を計画している。
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