研究課題
大学病院勤務の看護師200名を対象とし耳ピアス孔部分、および孔非保有者の耳垂部分の試料を採取し、培養法により各種細菌を検出した。その結果、耳ピアス孔保有者128名中24名(18.8%)、耳ピアス孔非保有者72名中7名(9.7%)より黄色ブドウ球菌が検出された。耳ピアス孔および孔非保有者の耳垂より黄色ブドウ球菌が検出された看護師のうち、約半数の各12名および3名、計15名の看護師の手指から黄色ブドウ球菌が検出された。これらの黄色ブドウ球菌の一部は抗菌薬耐性菌のMRSAであり、耳(耳ピアス孔または耳垂)および手指の両方から検出された例が計4例に認められた。その他に、腸球菌は3名の耳ピアス孔、1名の耳垂、および14名の手指より検出され、うち1名では耳ピアス孔および手指の両方より検出された。また、1名の耳ピアス孔より腸内細菌のMorganella morganii、6名の手指より緑膿菌やアシネトバクターを含むブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌が検出されたが、耳と手指の両方から同一菌種が検出された例は認められなかった。耳および手指の両方から同一菌種が検出された例において、検出菌の遺伝学的解析を行った結果、1例を除くすべての例において両部位検出株の同一性が確認された。以上の調査に加え、異なる大学病院の看護師201名を対象とし調査を行い、同様な結果を得た。以上のことから、医療従事者の耳ピアス孔においてMRSAを含む黄色ブドウ球菌が主に存在し、その頻度は、孔非保有者に比べ高いことが明らかとなった。さらに遺伝的同一株が手指にも付着していることから、耳ピアス孔の細菌が手指を介し、医療環境に伝播する可能性が示唆された。
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