研究課題/領域番号 |
26460783
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡山 明 日本大学, 医学部, 専任講師 (60169159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介入研究 / 保健指導 / 長期効果 / 医療費 / 治療中 / 高血圧 |
研究実績の概要 |
本年度は平成23年度から開始した研究の継続研究であり、特定健康診断で現在医療機関で高血圧の薬物治療を行っていると申告した人を対象として2年半の継続的支援を実施する長期保健指導によって、検査成績の改善と医療費の改善が得られることを証明することを目的としている。 平成26年度は協力の得られた11医療保険者107人を対象とした保健指導の継続を行った。保健指導は6ヶ月ごとの面接と、3ヶ月ごとに実践記録を提出してもらうことで構成されており、すべての医療保険者で保健指導が継続され、2年目および最終面接である2年半目の保健指導とヘルスマイレージの記録が行われた。平成27年1月までにすべての支援を完了した施設数は4、平成27年3月を持ってすべての保健指導が完了して当初予定した研究スケジュール通り経過している。 長期継続性の検討を行ったところ、平成23年に開始した際の対象者116名のうち、最後まで支援が継続された対象者数は107名となった。継続率は92.2%であり高い継続性を持つことが出来た。更に生活習慣の実践記録を定期的に提出してもらい、得点に換算するヘルスマイレージの実施率は当初110人(96%)であったが、最終的には82%が継続された。このことから長期フォローにおける継続率は極めて高く、ヘルスマイレージによる実践の支援方式は高い効果を上げたと考えられる。すでに行った介入1年後のデータ解析では、体重の減少、生活活動度の向上など生活習慣の改善度合いが高く維持されていることが明らかとなっている。本年度までにすべてのデータ収集が完了したため、今後はすべてのデータセットの確定を行い、保健指導効果の解析を行うことを目指す。 更に現在保健指導と並行して収集している医療費データとのリンケージを行い医療費と保健指導との関係を明らかにする準備を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3つのパートから構成されている。第一は長期フォロー体制の継続による長期支援の実施である。保健指導単独では支援者の負担が大きくなるため実践状況をモニタリングし得点を与えることで、対象者の支援を行うマイレージにより随時中央事務局が長期支援の大きな役割を果たす仕組みである。更に保健指導の効果を計測するために支援情報を全てデータ化し解析可能なデータセットを作成することである。第三は特定健診・医療費との照合を行って保健指導効果を対照群を設定した上で比較する為のデータセットの作成である。計画ではすべての保健指導を本年度中に完了することを目標としていたが、予定通り平成27年3月現在ですべての保健指導を完了した。期間内に2年半の保健指導を完了したのは長期の支援を行った115名のうち107名であり、1名は最終支援の予定が立たないため打ち切りとした。ヘルスマイレージの継続率は当初参加者のうち82%に達しており良好な継続率が得られた。更に保健指導データの収集も平成27年3月までにほぼ全ての施設からデータを改修できておりほぼ研究計画通りに進行している。 並行して実施した医療費データの収集はすべて予定通り行っており、必要なデータはすべて収集出来ている。平成28年11月以降にすべてのデータの収集を行って、保健指導効果を平成28年度保健指導結果および平成26年度医療費との比較を行う予定である。従って、研究計画通りに進行しており平成28年度中には最終データセットが完成し、データ分析が可能となる予定である。以上から達成度をほぼ計画通りとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は平成23-25年度に実施した厚生労働科学研究の継続として申請しており、その際に設定した集団の長期保健指導の継続とその効果の実証を目的としている。本研究の大きな特徴は、保健指導の長期実施とヘルスマイレージの運用方法の確立、保健指導効果の比較のため傾向性スコアを用いた仮想対照群の設定である。保健指導は本年度で終了しており、継続効果の高いことが証明された。 現在残されているデータ収集は平成26年度特定健診・保健指導・医療費の収集である。これらについても従来から継続した課題であり、大きな問題は起こらないと考えられる。今後はこれらの終了した保健指導データの収集と解析データセットの作成に向けて準備を行うと共に、協力保険者への還元策を検討していく予定である。 本研究では当初保健指導期間のデータの収集を予定していたが、協力が得られる場合には更に一年間継続し平成27年度の健診データ、保健指導データ、医療費データが収集できれば研究データの価値は大きく増加する可能性がある。そこで、保険者との協議を進め更にデータ収集期間の延長をはかることを目指したい。このためには、保健指導効果の証明と共に協力保険者にとっての明らかな利益となるものを還元する必要があると考えられる。研究グループ内で詳細に検討してデータ収集期間の延長をはかりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は長期フォローのためのヘルスマイレージの運用と医療保険者からのデータ収集に専念した。また発生したデータの効率的な解析のためデータ管理システムの構築を予定していたが、本年度に発生した保健指導データの入力、医療保険者の協力を得て並行して収集している平成23年度から平成25年度までの特定健診・保健指導・医療費の収集データの整理作業がやや遅れているため、今年度は管理システムの構築まで至らなかった。今後はデータセットの整理と最終医療費の収集を目指しており、現在までのデータの整理格納が必要な段階となってきた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で発生したデータは6回の保健指導、生活習慣記録4年分の特定健診保健指導記録、医療費など膨大であり、これらのデータの管理を行うためのデータ管理システムの構築が必要となってきている。本年度は前年度構築できなかったデータ管理システムの構築とデータの格納を重点的に行うことを予定しており、この開発費として支出する。またこれらの研究成果を、協力医療保険者に還元する方策として、わかりやすい指導用教材として開発し、治療中の人に対する保健指導の枠組みについて協力医療保険者対象の研修会を実施する予定である。更にこれらの研究成果の公表を行う為に旅費として使用する予定である。
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