治療中の者であっても保健指導が重要で、主治医と連携しながら適切な生活改善支援を行うことが重要と考えられる。しかしこれらは観察研究の結果、あるいは研究として特別に整備された条件で実施した研究の成果であり、保険者が保健事業として実施した場合の効果があるか否かは明らかではない。高血圧では治療中の者の占める割合も高いことが報告されている。高血圧治療中の者について主治医の協力を得て保険者と共同で統一プロトコールで保健指導を実施した。割り付けは保険者内仮想対照を設定して実施。支援群には研究班の作成したプロトコールに沿って支援を実施し、123名が研究に参加し初回支援が可能であったのは116名であった。最終的に6ヶ月の支援及び24ヶ月の継続支援を実施したところ、指導開始と比較して支援期間中生活習慣の改善と血圧の低下が維持できることが明らかになった。このことは、治療中であっても、契約に基づく一定期間の保健指導を実施することが出来れば、検査成績が改善すること、長期フォローによりその効果が継続することが明らかとなった。この成果を他の類似した対象者の医療費の推移と比較して、医療費効果を明らかにするため、仮想対照群を設定することを試みている。データ収集として各保険者の被保険者全ての特定健診・保健指導・医療費情報を27年度医療費まで収集し、医療費データの解析状況が整った。最終的には、仮想比較群との対比結果を公表し、治療中の人への保健指導の有効性について、学術雑誌に報告する予定である。 医療保険者はメタボリックシンドロームを中心とした循環器疾患のハイリスク者に対する支援を行い医療費適正化に結びつけることが義務づけられている。本研究により高血圧などの治療中のものに対する保健指導を実際に保険者が実施可能であり、効果が期待できることが示された。今後の保健事業の推進の基礎的資料として活用可能と考えられる。
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