研究実績の概要 |
本研究では,幅広い年齢層を含む職域集団を対象に体組成(体脂肪分布,骨格筋量)を評価し,Body Mass Index (BMI)や腹囲では評価できない性・年齢別の肥満・やせの問題点を明らかにすることを目的とする.平成28年度は,1,216名に対して体組成の評価を行った.また,体組成測定の結果と健康診断の結果を結合し,体組成と生活習慣病との関連を検討した. BMI,腹囲,体脂肪,筋量と代謝異常の関連を検討したところ,男性では収縮期・拡張期血圧,総コレステロール(TC),HDLコレステロール(HDLc),中性脂肪,空腹時血糖値(FPG)はいずれも体脂肪量と関連が最も強く,HbA1cはBMIとの関連が最も強かった.女性では,収縮期・拡張期血圧,HbA1cはBMIと,HDLc,中性脂肪は腹囲と,FPGは体脂肪量と最も関連が強かった.女性では骨格筋量,体脂肪量とTCとは有意な関連は認めなかった. 次に,腹部肥満の有無と骨格筋量(25パーセンタイル未満,それ以上)で対象者を4群に分類し,代謝指標の平均値を比較した.男性では,肥満があり骨格筋量が少ない群で,収縮期・拡張期血圧,TC,中性脂肪,HDLc,LDLc,FPG,HbA1cが最も高く,HDLcは最も低かった.女性ではTC,LDLcは非肥満で筋肉量が少ない群で最も高く,収縮期・拡張期血圧,中性脂肪,FPG,HbA1cは肥満で筋肉量が少ない群で最も高かった. 以上より,骨格筋量単独ではBMIや体脂肪以上に代謝異常と強い関連は認めなかったが,特に男性においては肥満と組み合わせることで代謝異常との関連がより明確となり,サルコペニア肥満と生活習慣病が強く関連することが示された.女性では肥満,筋肉量と代謝異常との関連は代謝異常の種類により異なり,高コレステロール血症はサルコペニア肥満とは別に考慮する必要があることが示唆された.
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