研究課題/領域番号 |
26460788
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
由良 晶子 近畿大学, 医学部, 講師 (80142595)
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研究分担者 |
藤田 裕規 近畿大学, 医学部, 講師 (10330797)
伊木 雅之 近畿大学, 医学部, 教授 (50184388)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスク評価 / 骨折 / 骨粗鬆症 / 予防医学 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症治療開始基準となっているFRAXの有効性を日本人男性で初めて検証し、FRAXが対応しない椎体骨折のリスク評価モデルの樹立を目指す3年計画の研究の2年次を概ね予定通りに実施した。 (1) 胸腰椎のデジタル画像解析(担当:由良、伊木):5年次調査時の椎体画像1634件、すべてを椎体計測し、変形のあった者についてbaseline画像を同様に解析した。椎体の前縁高、後縁高、中央高の測定が完了した。 (2) 腰椎海面骨微細構造指標Trabecular bone score (TBS)の計算(担当:伊木): Baseline 時のDXA による腰椎image から専用ソフトウェア(TBS iNsight)によりTBS を求めた。さらに、FRAXによる骨折発生予測がTBSを加えることで改善するかどうかを検討し、FRAX単独のROC曲線下面積は0.681だったが、TBSを加えることで0.732に改善することを確認した。 (3) 保存血清中のesRAGE濃度の測定(担当:由良、伊木):直近の研究からsclerostinよりもesRAGEが骨折予測に有望である可能性が高くなったので、esRAGEの測定を開始し、2007年のベースライン調査分の検体1054件を測定した。 (4) 保存血清中のsclerostin濃度の測定(担当:由良、伊木):sclerostinはパイロット研究的に160件測定し、年齢と0.331の有意な正の相関、骨密度とも0.3~0.4の正の相関、骨代謝マーカーとは正の相関があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
椎体骨折の判定のための椎体計測に時間を要していたが、今年度、予定通り完了した。 腰椎海面骨の微細構造を表すTBSを腰椎の骨密度イメージを再解析して計算した。これは骨密度と正の相関をもつが、FRAXに加えることでFRAXの骨折予測性能を改善することを日本人では初めて明らかにした。 最近、Advanced glycated end-product (AGE)の一つであるPentosidineの増加によってコラーゲン線維の生理的架橋が減少して加齢架橋が増加するため、コラーゲン線維が弾性を失い、骨が脆くなることが報告され、それを防ぐ生体内機構の一つとしてAGEのおとり受容体であるendogenous soluble receptor for AGE (esRAGE)が注目された。そこで、2007年受診者分の測定を完了した。 sclerostinの測定はesRAGEの測定を優先したので、遅れていたが、160例を試験的に測定し、これまでの報告と同様な年齢や骨密度との関連を見いだしたので、次年度に測定を継続することとした。
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今後の研究の推進方策 |
(1) Vertebral Fracture Assessmentによる椎体骨折の診断(担当:由良、伊木):椎体高の測定が完了したので、椎体高がベースライン時点より20%以上低下し、かつGenantのGrade 2 骨折の基準を満たす椎体を骨折と判定し、新規椎体骨折を診断する。 (2) FRAXによる骨折予測性能の改善手法の開発(担当:藤田、由良):昨年度はTBSの追加によってFRAXの骨折予測性能を改善可能かどうかを検討したが、28年度は骨代謝マーカーやesRAGE、sclerostinの追加によってそれが可能かどうかを検討する。 (3) 椎体骨折発生リスク評価モデルの開発(担当:藤田、由良):椎体骨折の診断が完了したら、骨密度、既存椎体骨折、骨代謝マーカー等を用いたロジスティック回帰かポアソン回帰によって、男性における椎体骨折リスク評価モデルを確立する。 (4) 保存血清中のsclerostin濃度の測定(担当:由良、伊木):27年度に完了しなかったsclerostinの測定を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定補助者の勤務時間により、人件費に若干の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
sclerostin測定用ELIZAキットを購入する。研究成果発表のための旅費を支出する。
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