骨粗鬆症治療開始基準となっているFRAX®による主要骨粗鬆症性骨折予測発生率は実測値の2倍程度と高かった。これは、本対象者の死亡率が日本人男性の死亡率の1/2程度であったことから、いわゆるHealthy people effectと考えられた。一方、FRAX®の予測発生率単独による骨折予測では、ROC曲線下面積(AUC)が0.652で、FRAX®を作成したオリジナルコホートでの値0.63を上回った。この結果から、FRAX®による主要骨粗鬆症性骨折予測発生率は実測値を上回るものの、骨折の予測にはこれまでの報告と同程度には有効であることが、日本人男性で初めて検証された。 FRAX®の予測性能の改善のために、腰椎海面骨微細構造指標Trabecular bone score (TBS)を求めてFRAX®モデルに加えたところ、AUCは0.690と上昇し、FRAX®単独のAUCを上回って、骨折予測性能を改善できた。さらにpentosidine、esRAGE、あるいはpentosidine/esRAGE比を加えると、AUCはそれぞれ0.725、0.683、0.709となり、esRAGE以外ではさらに骨折予測性能を改善できた。 ベースラインと5年追跡時に撮影した椎体イメージを計測して新規椎体骨折を診断した。解析できたのは1634人分で、椎体骨折は41人の46椎体に発生し、発生率は5.34/1000人年であった。この発生をベースライン指標で予測するためのlogistic modelを作成したところ、予測変数に骨密度を用いないFRAX®による主要骨粗鬆症性骨折予測発生率、腰椎BMD、pentosidine/esRAGE比、血清オステオカルシン値、血清尿酸値を入れた場合にAUCは0.845で実用レベルとなり、日本人男性の椎体骨折予測モデルを初めて樹立できた。
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