研究課題
脂質異常症が循環器疾患の危険因子であることは、国内外の多くの疫学研究により報告されているが、脂質異常の指標が複数あることはその解釈を困難にしている可能性がある。また、血清脂質値の加齢に伴う変化は男女で大きく異なっており、性差に基づいた効率的で適切な脂質管理が必要である。本研究では、動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準に用いられている総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)などの単一の指標に加え、non-HDLコレステロール、LDL-CとHDLコレステロール(HDL-C)の比をとったLDL-C / HDL-C比(LH比)などの脂質管理の指標と循環器疾患の発症(虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血)との関連を男女別に検討した。その結果、TC、LDL-C、HDL-Cは、男性では虚血性心疾患発症との関連がみられたが、女性では関連がみられなかった。一方、女性では低LDL-Cが脳出血のリスクとなっていた。LH比においても、男性でのみ虚血性心疾患発症との関連がみられた。男性においては、脂質異常の指標は虚血性心疾患発症のリスク管理の面から捉えることが可能であるが、女性におけては低LDL-C、低TCが脳出血発症のリスクとなることから脂質管理が難しく、新たなバイオマーカーや生活習慣を含めた脂質管理における指標の更なる検討が必要であることが示唆された。コホート研究における20年間の追跡データを用いて脂質管理の指標の経時変化を分析した結果、虚血性心疾患発症と脂質管理の指標の経時的な変化に関連はみられなかった。コホート研究の参加者は、他の一般住民と比較して健康に関する意識が高く、発症までに脂質降下療法をうけている参加者が多く、循環器疾患発症までの脂質異常指標の経時的な変化についての検討については大規模なリアルワールドデータを用いた分析の必要性が示唆された。
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