研究課題
本年度は当初目標の新規バイオマーカーの測定準備を行うとともに以下の2つの新規のリスク予測モデルを検討した1)吹田研究による脳卒中発症リスクスコアの研究吹田研究のベースラインデータをもとに吹田スコア(冠動脈スコア)と同様に一次予防を目的とした脳卒中の10年発症リスクスコアを作成した。平均15.3年の追跡期間で257件の脳卒中発症を認めた。年齢、性別、心房細動、CKD、冠動脈疾患の履歴、LVH,収縮期血圧、降圧薬内服、糖尿病、喫煙が有意な予測因子であり、新しいスコアはフラミンガム研究のリスクスコアよりc-statsisticsなどが有意に高く、日本人の脳卒中のリスク予測により有効であることが示された。2)循環器疾患を有する糖尿病患者におけるMACE発症リスクスコアの作成国立循環器病研究センターを中心に前向き観察研究として、循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、脳卒中、Afなど)を有する患者群におけるHbA1Cの至適カットオフを検討するMIDAS研究の登録者の1年観察データをもとに、HbA1Cの至適カットオフを検討した際に、7.0以下でもMACE発症が上昇するU字型分布ととることとCKD合併が一因であることを見出し、2015年の循環器学会のLate breaking abstractで報告した。同集団におけるMACE発症について、国立循環器病研究センター内の786症例のAMI症例について期間中の全検査データを記録したデータベースの作成を行い、これをもとにサポートベクターマシンによるデータマインニングにより、一年後のMACE予測を行った。従来の古典的リスク以外の約20項目の検査データを加えることで従来リスクによるモデルより約15-20%高い正確性での予測が可能であった。今後、他の疾患患者やでのデータも加え、より広範な患者でのテーラーメイド化されたリスクスコアを作成予定である
1: 当初の計画以上に進展している
従来のリスク予測に加えて、新たにに2つの疾患領域、すなわち脳卒中のリスクスコア、さらに循環器病疾患における2次予防のリスクスコアの開発が可能になった。更にサポートベクターなど機械学習によるデータマインニングを用いて、従来のリスクスコア作成に用いられる生存解析による線形モデル予測を超える予測精度を達成する可能性が示唆され、吹田スコアに対する改良の可能性がより明らかになった。またMPO/PON-1比については研究協力者杜らとともに他の新規マーカーより優れることをatherosclerosis誌に発表しており、今後吹田研究における保存検体などでの測定を通じより広範な応用可能性が高いことを確かめている。また同時期に冠動脈不安定プラークに対するMRIが有用であることを野口らともにJACC誌に1報報告、および今月1報が受理されているが、冠動脈CTなどと合わせて今後のリスク予測スコア潰瘍に有用と思われる
上記のような結果をもとに次年度は以下の研究計画を立てている1)吹田研究による吹田スコアの外部におけるvalidation。これについては、久山町など他のコホートにおいてのvalidationを計画している2)MPO/PON1などの新規マーカー測定こちらについては、保存検体の整理、倫理委員会申請などの準備を行っている3)脳卒中リスクスコア。こちらについては2010年までの予後確認データでの再検討とNRIなどによるフラミンガムスコアに対する優位性検討を行う予定である4)データマインニング手法によるMACE予測。さらにニュウラールネットなどの予測モデルを検討する。5)経済的インパクト予測。循環器学会IT/Database委員として参画しているJROAD70万例などのレセプトデータをもとに検討を行っていく予定である
次年度に測定資料をまとめて計測を行うため
次年度にMPO/PON-1測定などを行う予定
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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