研究課題
認知症の予防対策の推進に資するため、眼底の網膜情報を用いた認知症発症リスクの評価に関する疫学研究を行った。秋田農村の1999~2014年の認知症新規認定者(介護保険認定に係る主治医意見書にある「認知症高齢者の日常生活自立度」がIIa以上かつ要介護度Ⅰ以上の者)のうち、1983-2004年の循環器健診時に眼底検査を受けた351人(健診時から認知症認定時までの期間が5年以上の者に限る)と性、年齢、健診受診年をマッチングさせた702人の対照群の網膜血管所見を比較検討した結果、細動脈狭細所見の保有は、過体重、高血圧、高血糖、脂質異常、現在喫煙、および要介護認知症発症前の脳卒中発症の有無を調整しても、要介護認知症の発症リスクを48%上昇(95%信頼区間:4-110%)させることが示された。次いで、眼底画像解析システムIVANを用いて、網膜血管径を定量化して同様の解析を行ったところ、耳側の最大径の網膜静脈とそれに伴走する網膜動脈径の比(AVR)の平均値は、要介護認知症発症群で0.69±0.18、対照群で0.72±0.20と有意ではないものの要介護認知症発症群の方が小さい傾向を示した(P=0.14)が、同AVR比が0.7以上群に対する0.7未満群の要介護認知症発症の多変量調整オッズ比は、1.3(0.9-1.8)と有意のリスク上昇を認めなかった。また、本検討は、IVAN本来の計測値である網膜中心動脈径推計値と網膜中心静脈径推定値を用いて分析しても同様の結果であった。すなわち、網膜血管径の定量化指標は定性的所見と比較して要介護認知症の発症リスクの予測力を向上させないことが示唆された。ドルーゼンに関しては半定量化ソフトを用いての黄斑部からの距離ごとの個数、最大径、濃度の計測に手間がかかり現時点で未了である。ドルーゼンと要介護認知症発症との関連の分析結果は研究成果報告書にて報告する。
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J Atheroscler Thromb.
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10.5551/jat.37291
http://www.osaka-ganjun.jp/effort/cvd/r-and-d/research-work/pdf/26_activities_kitamura_01.pdf