研究実績の概要 |
平成27年度までに、アリルニトリルが皮膚感作性物質(1-chloro, 2,4-dinitrobenzene, glutaraldehyde, formaldehyde)のもたらす炎症反応(耳介の腫脹)を抑制することを明らかにできたものの、アリルイソチオシアネート(アリルニトリル同様sinigrinから生成されるnrf2活性化剤)には同じ活性は認められなかった。この特異的アリルニトリルの生物活性(抗炎症作用)はアリルニトリルがもつantioxidant/phase II detoxification enzymes の活性化(Thiobarbituric acid reactive substances levels, superoxide dismutase, catalase, glutathione peroxidase)と関連、すなわちantioxidantsの誘導およびその程度、しているように思われたが、他の要因の関与も否定できなかった。ただし、NFkB経路に関して検討するために炎症マーカーとしてIL-1B, IL-6, TNFaをELIZA法で評価したものの、アリルニトリルは50~200 micromol/kg/dayでいずれのマーカーにも有意の影響をあたえなかった。アリルニトリルが低濃度で有する抗炎症作用に潜むメカニズムを知るためには更なる研究が必要と思われた。 最終年度では、特にアリルニトリルが有する生物活性の発信に努めた。すなわち、シンポジウム「環境と健康」を開催し、がん研究、分子生物学的研究、環境科学、中毒学等の分野からの研究者を招き総合討論を行った。さらにアリルニトリルの生物活性(毒性および抗炎症作用を含む健康影響)に関する総説を産業衛生学雑誌に発表し広報に努めた。
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