研究課題/領域番号 |
26460796
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
平林 公男 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20222250)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒトスジシマカ / デング熱 / ジカ熱 / 長野・山梨県 / 感染症媒介蚊 / 生息分布 / 成虫吸血飛来密度 / 幼虫生息密度 |
研究実績の概要 |
(1)長野県内におけるヒトスジシマカの発生動態を把握するために、上田市(標高460m)において、6月1日から10月17日にかけて原則毎日、ネット法で吸血飛来する成虫を捕獲し、計測した。成虫の吸血飛来数は、6月10日(1個体/6分間)から10月3日(1個体/6分間)まで認められ、年最高捕獲数は7月10日、8月21日、9月4日にそれぞれ16個体/6分間ずつ記録された。調査期間中に合計332個体の成虫を捕獲することができた。昨年同様、日平均最低気温が15℃以上になると、成虫が吸血飛来に訪れ、10℃以下になると成虫の吸血活動は終束する傾向が認められた。 (2)ヒトスジシマカの1日の吸血飛来時間帯を明らかにするために7月24日、8月27日、9月20日の各日午前7:00から2日後の午前7:00までの48時間、3時間おきに日周調査を行った。どの時間帯でも吸血飛来にくる個体が確認され、日没前にどの月も吸血飛来に来る個体数の割合が多い傾向が認められた。しかし、再現性に問題があるように見られ、再度の調査の必要性を感じている。 (3)これまでに、長野県内におけるヒトスジシマカの生息分布のパターンを明らかにすることができたので、同じ内陸性気候帯の山梨県内において、ヒトスジシマカの分布パターンを検討した。8月30日から9月1日までの間に、成虫を対象に県内16地点、幼虫を対象に14地点を選び、調査を行った。幼虫調査では14地点43か所から410個体の蚊幼虫を捕獲し、10地点から183個体のヒトスジシマカを確認した。成虫調査では、16地点から430個体の蚊成虫が捕獲され、ヒトスジシマカは9地点から62個体捕獲された。調査地点の標高が800m以上の所からは、ヒトスジシマカの幼虫も成虫も捕獲できず、長野県内で得られた知見と同様の傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年同様、長野県上田市内定点におけるヒトスジシマカの発生動態を把握すること、ヒトスジシマカ成虫の1日の吸血時間帯を明らかにすることが大きな目標であった。1日の飛来時間帯については、発生期間中、毎月、調査を行ったが、はっきりとした傾向が認められず、H28年度にデータを積み重ねることとした。長野県内で得られた知見を同じ内陸性気候である山梨県内で検証したところ、同様な傾向が認められたが、調査地点の選定に誤りがあり、再度、H28年度に詳細な調査を行う予定にしている。概ね計画通り進んでおり、いずれの調査項目においても、詰めの時期に来ている。 H26年、東京都代々木公園ほかで、デング熱の国内感染が起こったこと、H27年-H28年にかけて、ジカ熱が世界的に問題となっていることもあり、本研究で対象としているヒトスジシマカに注目が集まっている。本研究の成果を社会に発信すべく、これまでの予備調査の結果も踏まえ、各種学会で積極的に発信できたことは特記すべきことでもある。また、県内の新聞紙にも複数回取り上げられ、社会への還元が積極的にできたと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)年による気候変動があることから、長野県内におけるヒトスジシマカの発生動態をより正確に把握するために、上田市(標高460m)定点において、継続して原則毎日、6月から10月にかけて、ネット法で吸血飛来する成虫を捕獲し、計測する。成虫の吸血飛来数のパターンに再現性があるのかを検討する。特に気温との関連性は重要であると思われる。(2)ヒトスジシマカの1日の吸血飛来時間帯を明らかにするために、7月、8月、9月に、午前7:00から翌々日の午前7:00までの48時間、3時間おきに日周調査を行う予定である。季節により、吸血飛来パターンが異なる可能性が示唆されるためである。(3)山梨県内におけるヒトスジシマカの生息分布を明らかにするために、未調査都市の調査を実施し、データの精度を上げる。成虫/幼虫の両方が捕獲されるところ、成虫のみが捕獲されるところ、両者が捕獲されないところの3パターンがありそうで、平均気温との関連性が示唆されるため、標高と分布との関連性を明らかにする。(4)長野県内のヒトスジシマカの分布パターンが、内陸性気候地域の分布パターンに一般化できるのか、新潟県など、近県の分布を調査する。(5)感染症媒介蚊のハザードマップ作成の準備を引き続き行う。(6)学会発表、論文執筆を積極的に実施していく予定である。
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