研究実績の概要 |
本調査研究は、胆管がんの原因となる1,2ジクロロプロパン、ジクロロメタンの使用状況、これらの代替物質の使用実態を調査することを目的としている。代替物質に関しては、トリメチルベンゼン(TMB)、ミネラルスピリットの使用増が予想されることから、これら物質の取扱作業者を対象に、個人曝露濃度、生態影響の調査を行う。 1)オフセット印刷業における事業場実態調査 長野県内の1印刷工業会1支部29社を対象に、印刷作業における化学物質の使用実態を調査した結果に基づいて、化学物質のリスクアセスメント手法の1つであるコントロールバンディング法を用いて評価を行った。得られた知見については、Journal of Occupational Healthへ論文投稿した。ジクロロメタンの使用は2010年に比し2013年で減少しており、胆管がん事例発生後、使用は減少していた。1,2ジクロロプロパンは使用されていなかった。小規模事業場にてリスクレベル3、4の物質が含有されており、事業者は地域産業保健センターを活用し、対策を講じる必要性があると考えられた。Journal of Occupational Healthへの投稿を以て本調査を終えた。 2)オフセット印刷工程の個人曝露濃度ならびに健康影響調査 オフセット印刷工程を有する1事業場の労働者を対象に、化学物質(トリメチルベンゼン、ミネラルスピリット等)への個人ばく露濃度ならびに健康影響調査を、半年に1回調査を実施した。質問紙調査、医師による問診・診察、化学物質の個人曝露濃度、尿中代謝物の測定、血液検査、を行った。洗浄剤の取扱い量は多いものの、洗浄剤の作業環境管理が適切な結果、TMBの個人曝露濃度は総TMBで0.52±0.22ppmと許容濃度25ppmに比し極めて低値であった。一方、調査対象外の有機溶剤が検出された。事業場側と今後対策を協議している。
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