研究課題/領域番号 |
26460799
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上山 純 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00397465)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 殺虫剤 / 網羅的解析 / ターゲット分析 / 高感度分析 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる平成27年度は計画通りに以下の取り組みを実施した。1)前年度と同様に殺虫剤散布職域従事者を対象に健康診断を8月及び3月に実施し、49名分及び38名分の生体試料を採取・保存した。これは前年度と同様の調査となるが、バイオマーカー等の信頼性の確認のために必要な検体であり、再現実験を試みる予定である。さらに、8月には九州地方の花卉栽培業者を対象とした健康診断で得られた尿82名とアンケート調査を行った。これまでに、一般生活環境中での化学物質曝露状況を差し引くために必要であったコントロール群となる対象者を用意できなかったが、今回初めて同地域の高齢者74名の生体試料を収集することができた。アジレント社製のGC-MSを用いて分離分析を行い、NISTライブラリー及びFihenライブラリーにて代謝物類を分析中である。サンプル前処理法はBouatraらの方法(PlosOne, 2013, 8, 9)を用いて水溶性代謝物及び有機酸代謝物分析を別々の前処理法で行う系統的分析法に切り替えた。これにより、一分析あたり、350種類の物質が検出され、そのうち150程度の物質がライブラリーで同定される手技を本研究室で確立できた。現在はこの方法は収集したサンプルに応用中である。前年度に予備的に57名から解析を試みた結果、2名から特異的な物質が検出された。そのうちの一つはクマリン系殺鼠剤の代謝物である可能性があることが対象者の薬剤使用履歴から判明した。動物実験にてクマリン系殺鼠剤の曝露と尿中代謝物のモニタリングを行ったが、この関係は明らかにならなかった。高分解能MSでの解析を試みるかどうか検討中である。3)前年度に開発した尿中ネオニコチノイド系殺虫剤の高感度分析法を利用して、アセタミプリドの生物学的利用能や曝露量と尿中排泄量の関係を明らかにした。さらに、ネオニコチノイド系殺虫剤の曝露量は1996年から現在にかけて上昇傾向にあることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンプル採取は順調に進んでいるものの、新規バイオマーカーの探索という意味では現在も検討中にある。しかし、クロマト上では一般健常人では検出されないような巨大なピーク(化合物の痕跡)が見えることは確認しているため、検出装置のさらなる高分解化が必要かどうかを検討する必要がある。アジレントテクノロジー社が有するGC-QTOFにてその可能性を探索し、現状を打開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、入手サンプルの分析を新しい前処理方法で解析を進める。平成27年度にコントロール群となり得るサンプルを入手できたので、これと比較することで曝露群のマーカー探索を推進する予定である。高分解MSによる同定には、アジレントテクノロジー社と協力して、迅速な解析を実施する予定である。いずれにしても、コントロールサンプルを入手できたことが本研究の推進力となることはまちがいなく、このいわゆるコントロールクロマトグラフと比較した曝露マーカーの探索へと進むことができるため、研究の目標の達成が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験計画に遅れが生じたため、実験動物購入費及び動物実験に関わる諸経費が平成28年度に繰り越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中に動物実験を予定どうりに実施し、曝露化学物質と尿中代謝物との関係性を再現する。また、曝露化学物質曝露量と代謝物排泄量の濃度時間推移を確認し、曝露量と代謝物の体内動態を把握する。
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