研究実績の概要 |
3年目にあたる平成28年度は以下の取組みを実施した。1)平成27年度と同様に殺虫剤散布職域従事者を対象に健康診断を8月および2月に実施し、45名および41名分の生体試料ならびに殺虫剤使用実績の調査を行った。2)アジレント社製のGC-MSおよびGC-MS/MSを用いて、尿中代謝物の網羅的分析と高感度ターゲット分析を実施した。網羅的分析法は前年度同様にBouatra法(PlosOne, 2013)をサンプル前処理法として用い、データ解析にはNISTライブラリーおよびFihenライブラリーを用いた半定量法を採用した。これまでに収集した尿サンプルについて、網羅的分析を施したところ、前日にバードリペルというハト飛来忌避剤を散布した作業者から特異的な代謝物が検出された。3)作業者の聞き取り調査から、ピレスロイド系殺虫剤曝露の網羅的モニタリングの必要性が顕在化したため、尿中に排泄されるピレスロイド系殺虫剤代謝物の網羅的測定法をGC-MS/MSを用いて実施することに成功した。ピレスロイド系殺虫剤は蚊の駆除にも多用されており、特に蚊媒介性の疾患への対策を目的とした夏場の薬剤散布が多くなることが懸念される。そこで、まずは殺虫剤散布履歴のない一般健常人の尿中ピレスロイド系殺虫剤代謝物を検出した結果、冬に比べて夏に高い値を示すことが明らかとなった。メトフルトリンおよびプロフルトリンの共通代謝物である2,3,5,6-Tetrafluoro-1,4-benzenedimethanolの濃度は10検体の結果、5ug/L以下であった。現在は殺虫剤散布作業者について分析中である。
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