研究課題/領域番号 |
26460804
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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研究分担者 |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10363699)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRSA / ACME / 市中感染 / ST |
研究実績の概要 |
本研究では、我が国での出現および分布拡大が示唆されているPVL陰性の新規市中感染型MRSA、すなわちST8クローンおよびACME(アルギニン代謝系可動性遺伝子要素)を有するST5(または近縁のST764)クローンの分布状況と性状を調べることを目的としている。昨年度、我々は北海道の医療機関由来の624株に関して主要な解析を終えたが、今年度は更なる解析を追加した。本邦固有のST8クローンはSCCmecIVのサブタイプL(SCCmecIVl)を有し、菌体表面蛋白遺伝子sasL (spj)を持つとされる。そこで、SCCmecIVのサブタイプが決定されなかった株に対し、SCCmecIVl特異的プライマーを用いて調べたところ、24株がSCCmecIVlを有することがわかり、これはサブタイプIVの中ではIVaに次いで多かった。またそれらはsasL遺伝子も保有しており、ST8に属していたことから、本邦固有のST8クローンであることが判明した。さらにACMEを保有する菌株に関しては、ゲノム上におけるACMEとSCCmecの配置を解析し、その配置のパターンには5種類あることが明らかとなった。アジアにおけるMRSAの調査として、ミャンマー、ネパールの医療機関で分離された菌株の解析を行った。ミャンマーではMRSAは4株(8%)と少なく、PVL陽性は1株でST88に属していた。ネパールのMRSA分離株32株にはPVL陽性が25株と多く、そのうち遺伝子解析された7株は、ST1、ST22、ST88、ST772に分けられ、ST772は4株と多かった。ST772はインド、バングラデシュではベンガル湾クローンとして知られる菌株であり、これがネパールにも分布していることが明らかになった。またST22の株はMRSA、MSSAともに、内部に欠失のあるエラスチン結合蛋白遺伝子の変異体を有していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道の医療機関で分離された菌株の解析は完了し、アジアのMRSAの研究として行ったミャンマー、ネパールの菌株の解析も行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
北海道の医療機関で分離された菌株の解析結果を今年度中に国際誌に投稿して発表する。また札幌医科大学病院で分離された菌株の解析を継続し、その遺伝学的性状について概要をまとめるところまで研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予定通りの研究を行ったが、割引価格の試薬を購入するなどしたことにより、少額の残余が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の研究費と合わせ、物品費(試薬)として使用する。
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