研究課題
本研究は我が国での拡がりが示唆されている新規市中感染型MRSAの分布状況とその特徴を明らかにすることを目的とする。今年度は、札幌医科大学附属病院において臨床材料から分離されたMRSAについて分子疫学的・遺伝子学的解析を行った。研究対象とした菌株は2011~2014年の期間に分離・保管された1041株である。これらのうちコアグラーゼ型(coa)はIIaが大部分(90%)を占め、次にIIIaが多かった(71株、7%)。SCCmecはI、II、IV、V型が検出され、II、IV型には数種類のサブタイプが同定された。これらのうちSCCmec-IIaが最多で、すべてcoa-IIa型であった。本邦での新規市中感染型MRSAにおいて特有とされるSCCmecIVl型は32株に認められ、これらはすべてcoa-IIIaに属しPanton Valentine leucocidin (PVL)遺伝子は陰性であり、調べられた株はST8に属していた。PVL遺伝子およびアルギニン可動性遺伝子要素(ACME)の両方を有する株は3株、PVLのみ陽性が2株、ACMEのみ陽性が9株検出された。PVL+/ACME+の3株はST8/spa-t008に属し、米国で優勢なUSA300クローンであると考えられた。PVL+/ACME-株はST6とST59、ACMEのみ陽性の株はST5またはST764で、ACMEには2種類の遺伝子型が認められた。coa-III型の株にはSCCmec-Iを持つ株が見つかり、薬剤耐性遺伝子を多数保有し多剤耐性傾向を示した。またcoa-Va型の株はST121に属し、エンテロトキシン等多数の病原因子を保有していた。以上の結果から、PVL陰性/SCCmec-IV/ST8の新規市中感染型MRSAが北海道において分布していることが明らかとなり、さらに新たな特徴を持つcoa-III/SCCmec-I/ST8-MRSA、高い病原性が示唆されるcoa-Va/SCCmecV/ST121-MRSAの存在が明らかとなった。一方、米国に多いST8-SCCmec-IVa、台湾に多いST59-SCCmec-V等のMRSAは拡がりを見せていないと考えられた。
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