研究課題/領域番号 |
26460807
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
北元 憲利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (70145928)
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研究分担者 |
加藤 陽二 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30305693)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食中毒 / 迅速簡便診断 / 単クローン抗体 |
研究実績の概要 |
種々の食中毒を同時に簡便・迅速に鑑別診断ができれば、食の安心・安全確保、また早期発見・早期予防・早期治療に役立つことができる。検出法としては、迅速・簡便なイムノクロマト法やマイクロアレイ法が考えられる。ただし、これらの方法を行うには単クローン抗体などの特異的かつ感度のよい抗体が必要であるため、必ずしもあらゆる微生物の検出に使われているわけではない。本研究では食中毒の原因となるウイルスおよび細菌に対する単クローン抗体を作製し、網羅的・体系化することにより、数種の食中毒を一度に、迅速・簡便・安価・多検体鑑別診断可能な検査法を開発することが目的である。対象となる細菌は、カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生菌)、黄色ブドウ球菌、セレウス菌およびウエルシュ菌である。また、ウイルスとしては、ノロウイルスおよびサポウイルスである。すでに実用化したもの(ノロウイルスのイムノクロマト法)を除き、よりよい単クローン抗体の樹立に取り組み、抗原的解析や抗体の特異性を確認している。すでに抗体として、カンピロバクター(外膜蛋白)、サルモネラ(鞭毛蛋白)、腸炎ビブリオ(耐熱性溶血毒)、病原性大腸菌(易熱性毒素)、黄色ブドウ球菌(エンテロトキシン)およびサポウイルス(共通抗原)については、抗体を樹立した。ELISA法にてその特異性や交差性を検討し、網羅的にELISA法では有用であることを確認した。今年度はウエルシュ菌(α毒素)およびセレウス菌(セレウリド)に対する抗体を樹立し、特異性の確認と抗原的解析を行った。イムノクロマト法への応用として、一昨年度までに抗ベロ毒素、抗黄色ブドウ球菌エンテロトキシンおよび抗サルモネラ鞭毛蛋白抗体が応用可能であることを確認しているが、今年度は抗カンピロバクター抗体が応用可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とした微生物(10種類)に対する抗体はすべて樹立することができた点では、おおむね計画通りに進行したと考える。ただし、抗体は得たものの、それが目的であるイムノクロマト法などの診断には有用でない抗体もあり、今後再度抗体作製する必要がある。(1)抗ベロ毒素(腸管出血性大腸菌)抗体、黄色ブドウ球菌の抗エンテロトキシン抗体、抗サルモネラ(鞭毛蛋白)抗体および抗カンピロバクター(外膜蛋白)抗体については、イムノクロマト法への実用化のめどがついた。(2)病原性大腸菌(易熱性毒素)、腸炎ビブリオ(耐熱性溶血毒)、ウエルシュ菌(α毒素)およびセレウス菌(セレウリド)に対する抗体については、特異的な抗体であることが分かり、今後、実用化への期待がもてる。以上のように、全体的にみれば、はおおむね計画通りに進行しているが、菌によっては、継続的・段階的に検討していく必要がある。ほとんどの抗体については、特異性などは確認できたので、今後は、抗体の評価と有用性を検討し、食材や野外材料を使った検出法の開発などを試みなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
病原性大腸菌(易熱性毒素)、腸炎ビブリオ(耐熱性溶血毒)、ウエルシュ菌(α毒素)およびセレウス菌(セレウリド)に対する抗体については、特異的な抗体であることが分かっているので、今後、イムノクロマト法にて実用化の検討を行う。未解析の各種抗体抗体については、競争ELISA法、ウエスタンブロット法、二次元電気泳動法などでその解析を行う。エピトープマッピングなどの抗原的解析も行う。抗体の有用性については、感度と特異性を調べる必要があり、PCRを使った遺伝子学的検査法と比較検討する。また、野外材料を使って実際応用可能かどうか検討する。ELISA法による有用性を検討したのち、さらに発展させて、イムノクロマト法による診断法の開発を試みる。これまでに手がけてきたノロウイルスの検出法を踏襲する。特別な器具も必要とすることなく、材料や試料を滴下するだけでバンド形成の有無、あるいは発色の有無を可視判定できるようにしたい。
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