研究課題
ネオニコチノイド類農薬は昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)にアゴニスト作用によって強い毒性を発揮するが、ヒトには安全であるとされ、世界中で汎用されている。しかし、最近、ヒトで農薬散布後に健康被害例が報告されてきており、実験動物においてもネオニコチノイド類を大量投与すると神経や筋だけでなく、性成熟後の精巣での障害が報告されているが、性成熟期前の精巣にネオニコチノイド類が影響を与えることを検討した報告はない。しかし、性成熟期前のネオニコチノイド類投与が精巣の発達や機能に与える影響を調査した報告はない。申請者らは性成熟期前の雄マウスにネオニコチノイド類を投与する前段階として、26年度は急性毒性実験として性成熟後の雄マウスにネオニコチノイド系農薬であるアセタミプリドを曝露すると体重は減少するが、組織形態は正常ながらも脳や精巣の細胞に遺伝子的に影響を与える事を報告した。27年度はさらに検討を進め、脳のアセタミプリドの蓄積量を検討した。脳の各部位(脳幹・大脳皮質・被殻・嗅球・中脳)のアセタミプリド濃度は、アセタミプリド無処置マウス群よりも処置マウス群の方が高くなる傾向がありました。特に、アセタミプリド無処置マウス群の中脳と比較して処置マウス群では有意に高かった。さらに、アセタミプリド無処置マウス群でも脳の各部位でアセタミプリドが検出された。したがって、アセタミプリドが臓器内に蓄積していることから、直接的に脳の細胞に影響を与えている可能性が示唆された。28年度はnAChRの発現を検討しました。その結果、脳の各部位(脳幹・大脳皮質・被殻・嗅球・中脳)でnAChRの発現がアセタミプリド無処置マウス群より処置マウス群で低くなっている事がわかりました。さらに、精巣のテストステロン代謝系の遺伝子の発現がアセタミプリド無処置マウス群より処置マウス群で低下している事がわかりました。
2: おおむね順調に進展している
26年度は性成熟後の雄マウスにネオニコチノイド系農薬であるアセタミプリドを投与し、ステロイド合成系や薬剤代謝系遺伝子が変化し、精巣内環境に影響を与える事を報告した。27年度は脳の各部位でアセタミプリドが蓄積している事がわかり、直接的に脳の細胞に影響を与えている可能性が示唆された。28年度は脳の各部位でnAChRの発現・精巣内テストステロン代謝系の遺伝子発現が低下している事がわかり、おおむね順調に進展している。
ネオ二コチノイド系農薬はニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に結合する。したがって、26~28年度の結果を踏まえ、精巣中のnAChR発現分布を検討し、テストステロン代謝系との関連性を検討する必要がある。
研究の進展に伴い、当初予想しなかった新しい結果が得られたことから、その結果を使用し十分な研究成果を得るために、当初の研究計画を変更する必要が生じた。その計画の調整に予想外の日数を要したため、年度内に完了することが困難となった。
新たな結果に含めた年次計画に則り、適正に支出します。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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