研究課題/領域番号 |
26460813
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
大西 志保 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (80511914)
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研究分担者 |
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (30263015)
平工 雄介 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30324510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境保健 / がん予防 / 炎症 / DNA損傷 / 黄砂 |
研究実績の概要 |
大気汚染による肺がんの予防対策が急務である。大気中浮遊微粒子はヒトに発がん性があり、土壌成分や燃焼由来の微粒子などを含む。浮遊微粒子の一つである黄砂の発がん性は不明であるが、粘膜付着や肺胞内への進入により炎症を起こす。我々は、炎症条件下では活性種が産生され、変異誘発性の酸化DNA損傷塩基8-oxodGやニトロ化DNA損傷塩基8-ニトログアニンが生成することを報告してきた。本研究では、黄砂による肺の障害作用、炎症、DNA損傷を解析して、黄砂の発がんリスク評価と予防対策に繋がる基礎的知見を得ることを目的としている。 平成27年度は、昨年度に引き続き黄砂をマウスに鼻から繰り返し投与した後、解剖して肺組織を採取し、組織学的解析および生化学的解析を行った。肺組織から抽出したタンパク質を、二次元電気泳動法による発現差解析2D-DIGEおよび質量分析装置TOF/MS/MSにより解析した結果、Apo-AIが増加傾向、DRP-2が減少傾向にあることが明らかとなった。Apo-AIは、抗酸化および抗腫瘍に関わるとの報告があることから、Apo-AIの増加は酸化的損傷に対する防御反応と推察される。DRP-2は、癌抑制に関わる可能性がありヒト肺腫瘍で減少しているとの報告があることから、黄砂投与群での減少は黄砂の肺腫瘍への関与を示唆するものと思われる。(論文作成中) また、吸入曝露による発がんリスクが懸念されている多層カーボンナノチューブをヒト肺上皮由来の培養細胞に曝露した実験では、労働現場で起こりうる条件下で8-ニトログアニンの生成が有意に増加し、その過程にTLR9が関与することを初めて明らかにした。(Hiraku Y et al. Part. Fibre Toxicol. 2016)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8-oxodG測定機器は復調し、順調に定量解析を進めている。培養細胞実験では、大気汚染物質による肺がんの発がんリスク評価に8-ニトログアニンが有効である可能性を示す成果が得られ、国際学術雑誌に論文を発表している。プロテオーム解析では、黄砂曝露が影響して発現量が変化したと思われるタンパク質を同定し、論文作成中である。したがって、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
すでに入手した黄砂試料を用いて、引き続き動物実験と培養細胞実験を行い、組織学的解析および生化学的解析を行う。炎症や関連因子、がん幹細胞マーカーの発現変動を解析し、黄砂曝露による肺障害作用と炎症関連DNA損傷との関連や、損傷機序について研究を進める予定である。おおむね計画通りに行う予定である。
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