研究課題
日本は世界最大の抗インフルエンザ薬使用国であり、薬剤耐性ウイルスが出現する危険性が高い。したがって、薬剤耐性ウイルスの発生動向の監視は公衆衛生上極めて重要である。そこで継続的に、日本国内で使用されている4種類の抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビル、ラニナミビル)に対する全国的な薬剤耐性ウイルスサーベイランスを実施している。2013年11月から2014年初めにかけて札幌市を中心とした北海道内で、オセルタミビル・ペラミビル耐性のA(H1N1)pdm09ウイルスの地域流行が起こり、北海道における耐性ウイルスの検出率は28%に達した。そこで本研究では、当初の研究計画を一部変更し、北海道で地域流行を起こしたオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスについて、in vivoおよびin vitroにおける性状を解析し、リスク評価を行った。また、同時期の世界113ヶ国における薬剤耐性ウイルスの検出状況をまとめ、日本国内の状況と比較した。その結果、北海道で地域流行を引き起こしたオセルタミビル・ペラミビル耐性のA(H1N1)pdm09ウイルスは、中国で検出された耐性ウイルスと同一由来であり、米国で検出された耐性ウイルスとは遺伝的に系統が異なることが明らかになった。また、北海道で検出された耐性ウイルスは、ウイルスの増殖・伝播適合性に寄与するアミ酸変異をもち、ヒト上気道のモデル細胞およびフェレットの上気道でよく増殖すると共に、フェレットにおいて感受性ウイルスと同程度の飛沫伝播能を有していた。したがって、アミノ酸変異によって増殖・伝播適合性を獲得した耐性ウイルスが、北海道内においてヒトの間で感染伝播した可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
A(H1N1)pdm09ウイルスは、2009年に出現しパンデミックを引き起こしたが、北海道におけるオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスの地域流行は、薬剤耐性ウイルスの流行としては、世界的にもこれまでで最大規模であった。そこで、当初の研究計画を一部変更し、北海道で地域流行を起こしたオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスについて、リスク評価を行うと共に、同時期の世界113ヶ国における薬剤耐性ウイルスの検出状況をまとめた。世界各国の検出状況をまとめるにあたって、次年度の研究遂行に役立てるために、世界5ヶ所のWHO協力センターにおける耐性ウイルス検出系に関する情報を収集できた。
今後は、当初の研究計画にしたがって、現行の耐性ウイルス検出系の改良および新規抗インフルエンザ薬ファビピラビルに対する耐性ウイルス検出系の開発を実施する。
年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。
上記のとおり。
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