研究課題/領域番号 |
26460817
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研究機関 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
王 瑞生 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 部長 (10321895)
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研究分担者 |
須田 恵 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 研究員 (90415969)
柳場 由絵 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 研究員 (90467283)
鈴木 哲矢 広島大学, その他の研究科, 助教 (20573950)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 1,2-ジクロロプロパン / 遺伝毒性 / ヒストンH2AXリン酸化 / 代謝 |
研究実績の概要 |
1,2-ジクロロプロパン(DCP)ばく露を受けたマウスの肝組織において、DNA損傷(コメットアッセイ法を用いた評価)は上昇し、またアルデヒド脱水素酵素の欠損により増強された。しかし、遺伝毒性のある代謝経路・代謝物は不明であるため、DCPの毒性評価や発がん性の解明に至っていない。本年度は活性代謝物やその代謝経路の同定、さらにこれらの中間代謝物の遺伝毒性について検討した。 代謝実験では、マウス肝のホモジネートとミクロソーム分画にDCPを添加し、1-chloro-2-propanolとmethyl glyoxalの生成が生成された。また培養細胞を用いての実験でもこれらの中間代謝物は基質用量依存的に産生されることが確認できた。酵素阻害剤を用いた実験から、CYP2E1、1A2及びADHがこの代謝過程に関与していることも明らかにした。 吸入ばく露実験では、DCP吸入ばく露したマウスの肝組織におけるDNA二本鎖切断(パルスフィールドゲル電気泳動法解析)やそれに伴って誘導されるヒストンH2AXのリン酸化レベルが上昇した。インビトロ解析では、ヒト肝由来細胞及び胆管由来細胞にDCPと上記2種類の中間代謝物を作用した後、いずれもヒストンH2AXのリン酸化が上昇した。 以上の結果、低濃度でも遺伝毒性を示すmethyl glyoxalがDCPの遺伝毒性作用・発がん性に係わっており、またCYPやADHがこの活性化経路を媒介することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はGST酵素の関与についても検討する予定であったが、CYP酵素の経路がより重要であろうという予備実験の結果を踏まえて、実験計画を若干修正した。その結果、DCPの新しい中間代謝物やその生成に関与する酵素の同定、さらにこれらの中間代謝物の遺伝毒性作用の明確化ができ、十分な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で明らかにした中間代謝物について、動物の吸入ばく露実験においても確認の実験を行い、インビトロ及びインビボにおける代謝と遺伝毒性のエビデンスを収集する。また、他の代謝経路から生成される中間代謝物について、その同定や遺伝毒性作用の有無について検討する。これにより、DCPの遺伝毒性・発がん性に係わる代謝経路、代謝物の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に動物の吸入ばく露実験回数は予定より少なくて済んだため、約20万円が繰り越しになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に行う動物吸入ばく露実験や別の代謝経路の解析にこれらの予算を使う予定である。
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