研究課題/領域番号 |
26460818
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
阿部 仁一郎 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (10321936)
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研究分担者 |
寺本 勲(木俣勲) 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20153174)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アニサキス / 抗原解析 / アレルギー / 熱耐性 / ペプシン耐性 / イムノブロット / ELISA / SDS-PAGE |
研究実績の概要 |
アニサキス感作個体に幼虫ホモジネートを経口投与すると、ELISA法によってアニサキス特異IgG、IgM、IgE抗体産生の再誘導がOD値の上昇により確認された。その再誘導は幼虫のExcretory-secretory exctract(ES抗原)よりもCrude extract(CE抗原)を抗原とした場合に明瞭に認められた。 ELISA法で認めた特異抗体がどのような幼虫の抗原分画に反応しているかをイムノブロット法で確認した。その結果、アニサキス初感染、再感染、ホモジネート投与後に各抗体アイソタイプが認識する抗原分画は、約130kDa、100kDa、50kDa、37kDa、25kDa、10~15kDa付近の複数の分画であった。CE抗原では100kDa、50kDa、37kDa、10~15kDa付近の分画が認識され、それらに対する反応は再感染とホモジネート投与後に強まる傾向があった。一方、ES抗原に対しては、130kDa、100kDa、50kDa、37kDa、25kDa、10~15kDa付近の分画が認識され、再感染後はそれら抗原に対する反応が強くなったが、ホモジネート投与後のそれら分画への反応は抗体アイソタイプによっては変化を認めないか軽微であった。 CE、ES抗原を加熱処理しても、その抗原性はELISA法で確認した場合、多少減退するが維持されていたことから、両抗原には熱耐性の抗原が含まれていると考えられた。 CE、ES抗原の120℃4分の加熱処理後のSDS-PAGEから判断すると、抗原分画は加熱処理でかなり変性していた。しかし、そのイムノブロット反応から判断すると、抗原分画によっては抗原性が残っているものと考えられた。 CE、ES抗原のpepsin処理後のSDS-PAGEから判断すると、抗原分画はペプシン・酸処理でかなり変性していた。しかし、そのイムノブロット反応から判断すると、抗原分画(約130kDa、100kDa、50kDa、65kDa、37kDa、27kDa、10kDa)によっては抗原性が残っているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はホモジネート投与後に上昇するアニサキス特異抗原分画を同定し、その抗原同定とモノクローナル抗体作製のためにそれらを分離精製する段階まで進める予定であったが、幼虫感染、ホモジネート投与実験において、再感染後の幼虫特異抗体の下降が予想より遅れたため、ホモジネート投与時期が遅れ、それにより特異的に認識される抗原分画の分子量の推定作業が遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験で、幼虫ホモジネートを投与した場合に上昇する特異抗体が認識する抗原の存在とその大まかな分子量を把握することができたので、今年度はその抗原分画のタンパク質の同定を試み、既知抗原との異同について検討し、さらに抗原が消化管粘膜にどのように侵入していくのか、循環血中に移行しているのかを検索するために、それら抗原に対するモノクローナル抗体の作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
イムノブロット解析に要する試薬を必要検体を見込んで発注していたが、実験中に得られた新知見を追及するために試薬の変更・追加が生じた結果、端数としての助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
特異抗体が認識する幼虫抗原を解析するための、免疫反応用試薬の購入に使用する予定である。
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