アニサキス幼虫の虫体抗原で免疫し抗体上昇を確認したラットに、約35kDa、14kDa分画の抽出物を接種し観察したところ、両分画接種群では個体ごとに頻度は異なるものの、沈鬱や顔面を手で擦る等の行動が認められた。感作動物への幼虫ホモジネート投与後に抗体反応を増強すると予想されるアニサキスヘモグロビンのmRNAシーケンスおよびそのアミノ酸配列は、これまでにアニサキス亜科線虫の中で、Pseudoterranova decipiensおよびAnisakis simplex同胞種としてA. pegreffiiにおいてのみ報告されており、国内アニサキス症の主原因であるA. simplex sensu strictoでは不明であった。今回、新規に作成したプライマーを用いてRACE-PCR法により2株のA. simplex sensu strictoおよび1株のA. pegreffiiの同配列約1000塩基配列を同定したところ、それらは既に登録されているA. pegreffiiの配列に最も高い相同性を示したが、同一および異同胞種間で変異のあることが判明し、アミノ酸配列においても変異を認めた。 本研究課題では、アニサキス感作動物に同幼虫のホモジネートを経口投与した場合に、抗体反応が増強される複数の抗原分画をイムノブロット法で解析し、特に反応を強く認めた2分画のうち、一方は近年アニサキスアレルゲンとして報告されたアニサキスヘモグロビンであることを質量分析で同定した。その分画抽出物を感作動物に接種したところ、前述した行動が認められたことから、同タンパク質は感作ラットにおいては何らかのアレルギー症状の発現に関与している可能性のあることが示唆された。
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