研究課題/領域番号 |
26460819
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
改田 厚 大阪市立環境科学研究所, 調査研究課微生物保健グループ, 研究主任 (50372131)
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研究分担者 |
山元 誠司 大阪市立環境科学研究所, 調査研究課微生物保健グループ, 研究員 (20649008)
奥 勇一郎 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10456832)
久保 英幸 大阪市立環境科学研究所, 調査研究課微生物保健グループ, 研究副主幹 (20321937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 呼吸器感染症 / 乳幼児 / ゲノム解析 / パラインフルエンザウイルス / 分子疫学解析 |
研究実績の概要 |
ウイルス性呼吸器感染症のうち、抗ウイルス薬が開発されていないウイルスの薬剤探索のため、抗ウイルス活性物質スクリーニング系の構築を目指している。今回、スクリーニングに使用可能となる細胞株を構築した。具体的には、Vero E6 細胞株のTMPRSS2(transmembrane protease, serine 2)遺伝子恒常発現細胞株を樹立した。高コピー数の呼吸器ウイルス遺伝子を含む呼吸器感染症由来の臨床検体を用いて、恒常発現細胞株によるウイルス分離を試みた。その結果、TMPRSS2 遺伝子発現細胞は、非発現細胞株と比較して、特にヒトパラインフルエンザウイルス (HPIV) 2型、3型の分離率が著明に増加した。しかしながら、RSウイルスやヒトメタニューモウイルスについては、分離率の改善が認められなかった。本細胞株は、HPIV の抗ウイルス活性物質スクリーニング系に応用可能であることが示唆された。 一方、複数年にわたるウイルス検出動向の把握、陽性株の分子疫学解析を目的に特定のウイルスに焦点を絞り、解析を進めている。今回、HPIV-1, HPIV-2 を対象とし、2010~2015年の期間に検出された73株、25株のHN遺伝子領域の塩基配列解読・分子疫学解析を実施した。HPIV-1 は、同一年において複数遺伝グループが混在する傾向が認められた。一方、HPIV-2 については、同一年において、単一遺伝グループが主流となる傾向が示唆された。現在、上記ウイルスの遺伝グループと特定の臨床症状の関連について、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
欧米で流行が認められ、公衆衛生上、重要であると考えられたエンテロウイルスD68型の国内感染拡大が2015年に突発的に発生した。複数の陽性株を検出していたことから、急遽、陽性株のゲノム解析、成果公表を優先させたことから、当初予定していた研究計画に変更・遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今回樹立した HPIV 高感受性細胞株を用いてウイルス分離をおこない、精製ウイルスと次世代シーケンサを使用することで効率的な全長ウイルスゲノム解析が可能になると見込まれる。また、上記細胞株を用いることで、患者数の多い HPIV-3 について、抗ウイルス活性物質探索のためのスクリーニング系構築に進展が見込まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業期間内において、急性弛緩性麻痺との関連が示唆されたエンテロウイルスD68型 (EV-D68) が流行した。公衆衛生上の重要性が高いと判断し、EV-D68の解析を予定外に実施したことから、計画内容に遅延が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
組換えウイルスの構築、海外学術誌へ投稿中の論文関連費用、学会での成果報告に使用予定である。
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