通常の生活環境における子どもの化学物質曝露とその体内汚染に関する知見は、わが国においてほとんど存在しない。本研究では、一般生活環境下において広範囲に使用され、子どもへの長期的な曝露による健康影響が懸念されるシロアリ防除剤や殺虫剤、プラスチック等樹脂製品に多用される可塑剤、カーテン等に防炎を目的として使用される難燃剤を対象として、子どもにおける各化学物質の体内汚染レベルを明らかにするとともに室内空気質の体内汚染への寄与について把握することを目的とする。 大阪府内の各自治体が発行する広報紙等を利用し、4月から9月の期間、研究への協力者を募った。応募のあった保護者の子ども合計127名 (小学生101名、中学生26名)を対象として、彼らの住宅寝室の空気中化学物質と彼らの朝起床時に排泄された尿を採取した。尿試料中の各対象化学物質の代謝物を体内吸収量の指標にした。 空気試料中の各化学物質を分析した結果、フタル酸系可塑剤ではフタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、有機リン系難燃剤ではリン酸トリブチルの検出頻度が高く、ほぼ全ての住宅室内より検出された。殺虫剤では、エンペントリン、プロフルトリン、メトフルトリン、ペルメトリン等のピレスロイド剤および有機リン系殺虫剤クロルピリホスが1~2割程度の住宅において検出された。尿試料中の各化学物質代謝物の分析を現在進めており、各化学物質について、その体内汚染レベルを明らかにするとともに、室内空気中濃度と代謝物排泄量との関連性を解析し、室内空気質の体内汚染への影響について評価する。
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