研究課題/領域番号 |
26460821
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
龍田 希 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40547709)
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研究分担者 |
仲井 邦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291336)
細川 徹 東北大学, 教育学研究科(研究院), 名誉教授 (60091740) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 社会生活能力 / 子ども |
研究実績の概要 |
我々は、胎児期における環境由来化学物質が出生児の成長や発達に及ぼす影響を調べるために、気仙沼市で平成15年より出生コホート調査を進めてきた。生後66ヶ月(5歳半)調査を進めている途上で東日本大震災が発生した。この東日本大震災は、気仙沼市に甚大な被害をもたらした。そのため、これらの調査は、震災前に調査を実施した群と震災後に調査を実施した群が発生した。震災前までに情報の収集が完了した基本属性については、これらの群間に差異は認められず、同様の集団であると思われたにもかかわらず、生後66ヶ月調査結果には差異が認められ、震災後に実施した群の生後66ヶ月調査の得点が有意に低くなった。以上より、東日本大震災は生後66ヶ月調査に影響を及ぼしたと考えられた。そこで、震災から3年が経過した生後120ヶ月時にも生後66ヶ月調査と同様の調査を実施し、震災が子どもの発達に及ぼす影響を検証することとした。 平成27年度は、平成26年度と同様に生後120ヶ月調査を継続した。平成27年度には、197組の母子が対象となり、150組より回収が得られた(追跡率76.1%)。生後120ヶ月調査は今年度で完了しており、総合的な追跡率をみると、713名を対象に質問票を発送し、568名から回収を得た(追跡率79.7%)。調査は順調に進行しており、追跡率も高い推移を担保することができた。平成28年度は、これまでの調査結果を入力し、震災の影響を解析する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、これまでの調査を続けて継続し、研究実施計画通りに生後120ヶ月調査を進めることができた。ここでは生後66ヶ月調査の結果から継次的な変化を調べるために、生後66ヶ月調査で用いた新版S-M社会生活能力検査を実施した。平成27年度で調査が完了しており、全体として79.7%の追跡率を維持することができ、目標とした75%を上回る回収率であった。新版S-M社会生活能力検査の得点が著しく低い対象児や震災後のストレス得点が異常値を示す対象児は確認されなかった。 データ入力がまだ未完了であることから、平成28年度にはデータ入力やダブルチェック、データの電子化を進めていく計画である。また、生後66ヶ月調査の結果を論文化する計画であったが、投稿できなかったため、平成28年度には論文を投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、これまでに調査を終えた生後120ヶ月調査結果をデータ入力やダブルチェック、データの電子化を進めていく計画である。それが完了した段階で、東日本大震災が子どもの発達に及ぼす影響を検証する。 統計解析を進める中で、新版S-M社会生活能力検査や震災後ストレスにおける異常値が発覚するなど介入が必要と判断される対象者がいた場合には、地域の児童相談所や心療内科と連携しながら、個別に対応をしていく。 また、解析を完了している生後66ヶ月調査の結果を論文化しているので投稿する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で進めている調査研究では、平成15年度から進められている既存のコホート調査に新たな研究課題を追加した。調査には、現地スタッフを1名雇用する計画であったが、研究代表者と分担者で仕事を分担しながら進めた。そのため、人件費を繰り越すこととなった。旅費についても既存のコホート調査で支出した。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで調査は順調に進めることができたが、データ入力などが未完了である。そのため、それにかかわる費用やデータ入力やデータの電子化などの事務作業担当の人件費として使用する計画である。
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