研究課題
健康には個人の生活習慣のみならず、社会環境や周辺環境が影響を及ぼすことが知られている。特に、健康を支える社会基盤としてソーシャルキャピタル(地域での助けあい・人々の結びつきの強さ)が注目されてきている。本研究では都市部である新潟市と典型的な農村部である新潟県十日町市と阿賀町の高齢者に対する大規模アンケート調査を実施し、都市部と農村部の健康の社会的決定要因の違いについて明らかにした。一般的に肥満は多くの心血管疾患や死亡のリスクである。しかし、高齢者では肥満とは反対に低体重(BMI18.5未満と定義、やせ)も死亡のリスクであることが分かっている。特にアジア人ではこの傾向が強く、肥満よりもむしろ低体重のほうがリスクである。本研究では、健康の社会的決定要因の1つとして、低体重の要因を都市と農村部という観点から検討した。興味深い結果として、農村部でのみ、「近所づきあいがよくない」ことが低体重と関連していた。特にその傾向は女性で強かった。年齢、主観的健康感、収入、学歴、食生活、歩行時間、うつ状態、職歴等を調整した上でも、その傾向は変わらなかった。このことから、ソーシャルキャピタルが健康を支える社会的要因として注目されてきているが、都市部と農村部という社会環境が異なる状況ではソーシャルキャピタルが及ぼす個人への影響の度合いや性質が異なる可能性があり、今後、さらなる検討が必要と考えられた。本研究では、新潟県の都市部(新潟市)、農村部(十日町市、阿賀町)において高齢者に対する大規模アンケート調査を実施し、農村部と都市部における健康の社会的決定要因の違いについて、一定の知見を得た。今後、引き続き詳細な検討が必要である。
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厚生の指標
巻: 63 ページ: 1-6