本研究は、1988年より20年以上に及ぶ胎児期から思春期の出生コホート研究(母子保健縦断調査)を基盤として、学童期・思春期における「ソーシャル・スキル」に影響する胎児期及び幼児期の環境要因を明らかにすることを目的とする。 胎児期から乳児期、さらに学童期・思春期におよぶ追跡研究は国際的にも数少ないことから、本研究における子どもを対象とした出生コホートデータは国内外において非常に貴重なデータである。特に、母親の生活習慣を含む胎児の暴露環境と後の子どものソーシャル・スキルとの関連を検討する点で独創的である。また、これらの成果を蓄積していくことは母子や思春期保健における支援方法に対し科学的根拠を提供する点で重要であり、かつ意義深い。 平成28年度の計画に関して、現在行われている母子保健縦断調査、さらに思春期においての既存調査で使用している「思春期の心身の健康と生活習慣に関する調査」および年2回自治体と市中の小学校・中学校の協力により実施しているhyper-QUテストのソーシャル・スキル調査データを得る調整を行ってきた。しかし、調査関係機関との調整が順調に進まず、平成26年度、平成27年度、平成28年度のソーシャル・スキル調査データの取得に至っていない。従って、新データによる学会発表等も来年度以降となる。本年度は研究期間の最終年度であったため申請時の研究計画書に記載したデータ取得に至らなかった場合の対処のとおり、すでに収集されている2012年・2013年に取得済のソーシャル・スキルデータの基礎解析を実施し、胎児期・幼児期の育児環境を含めた時系列多変量解析(マルチレベル解析など)のモデル構築の検討を継続実施した。
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