研究実績の概要 |
私たちは、新潟県津南町において、平成21年度から中学3年生において空腹時インスリン値ならびに血糖値を測定し、インスリン抵抗性指数のHOMA-R指数ならびにインスリン分泌能を反映するHOMA-β指数を求め、関連する因子を検討してきた。 平成26年度までに、合計で男児252名、女児193名の測定を行い、男児のHOMA-R指数、HOMA-β指数およびBMIの中央値は、それぞれ, 1.2, 64, 19.2で、女児ではそれぞれ1.5, 86, 20.4であった。男女間で比較すると、HOMA-R指数、HOMA-β指数およびBMI共に女性で有意に高値であった(p=0.002, P<0.001, P<0.001) (Nishimura R et al, JDI, 2017, accepted) 。 対象とした児童において生活習慣に関するアンケートを行い、測定したデータと連結して、その関連を見る予定であったが、町からの許可が得られなかった。そこで、町との度重なる交渉の結果、平成27年度からアンケートをせずとも、食生活(特に魚を摂取しているか否か)を予測できる脂肪酸分画を測定する許可が得られた。 平成27年-28年度に、対象とした中学3年生124名中118名(参加率95.2%)において空腹時採血を施行した。EPA/AA比の値[中央値(25-75%値)]は、0.130(0.098-0.160)と一般人口の基準値である0.3以上と比較して著しく低い値が観察された。0.3以上の者は2名だけであった。HOMA-R指数とEPA/AA比の相関をSpearmanの順位和相関係数で検討したところ、r=0.18(p=0.043)と有意な相関が見られた。 津南町の小児における、魚の摂取は極めて少ない可能性が示され、魚の摂取とインスリン抵抗性は関連する可能性が示された。今後、対象症例数を増やし詳細に検討したい。
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