研究課題
本研究は主要生体指標のうち糖代謝に関する指標に着目し、貯蔵鉄を表す血清フェリチンの違いが糖代謝関連指標に及ぼす影響を前向きに追跡して検討したものである。富山県の某製造業事業所の35~57歳の男性従業員を対象にベースラインで血清フェリチン、空腹時血糖やインスリンなどの測定を行い、3年追跡後に再び空腹時血糖やインスリンを測定した。このうち糖代謝異常、病的な血清フェリチンの上昇、貧血の治療、肝障害、炎症のない575名を解析対象者とした。ベースライン時の血清フェリチンにしたがって対象者を三分位(4.9-87.1、87.2-140.5、140.6-396.8 μg/L)に分けた。各群におけるBody Mass Index(BMI)、空腹時血糖、インスリン、HOMA-IR(インスリン抵抗性指数)およびHOMA-β(インスリン分泌能指数)の3年間の変化量を比べると、血清フェリチンが高いほど空腹時血糖、インスリンおよびHOMA-IRの増加量が大きかった。この正の関連は、各群のベースライン時の当該指標やBMIなどの交絡因子を調整しても有意であった。HOMA-βについては、血清フェリチンに関するいずれの群でも有意な増減がなかった。対象集団をBMIの中央値で2群に層別化(BMI <= 22.71 kg/m2、22.72 kg/m2 =< BMI)して同様の解析を行ったところ、BMIの高低に関わらず血清フェリチンの上昇は空腹時血糖、インスリンおよびHOMA-IRのさらなる増加と関係がある傾向がみられた。血清フェリチンと肥満状況との間にはHOMA-IRの増加に対する交互作用はみられなかった。血清フェリチンの病的ではない範囲での高値がインスリン抵抗性を介して糖代謝を悪化させる可能性がある。
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Experimental and Clinical Endocrinology & Diabetes
巻: 125 ページ: 12-20
10.1055/s-0042-118175