研究課題/領域番号 |
26460852
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
森 寛子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50719424)
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研究分担者 |
内藤 真理子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378010)
戸原 玄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (00396954)
石崎 達郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (30246045)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 摂食嚥下リハビリテーション / 胃ろう患者 / 脳血管性疾患 / 在宅介護者 / フォーカス・グループ・インタビュー / 質的研究 / 継続的比較 / 経口摂取 |
研究実績の概要 |
胃ろうへの社会的関心は高まっている。しかし、その多くは、胃ろうの原因疾患、認知機能の程度、介護ケアの場所などが特化されない議論という感は否めず、学術的な研究による知見は少ない。 一方、嚥下機能回復への人材育成や正しい嚥下機能評価の必要性の認識も高い。リハビリテーションは、機能回復を主眼として施行されるのが第一目的である。しかし、胃ろうを主栄養摂取手段とし胃ろう抜去の可能性が低い患者に、熱意をもって摂食嚥下リハビリテーションに取り組む在宅介護者は存在する。摂食嚥下の専門家は、このような患者の経口摂取に対し「お楽しみ」と評価してきた。しかし、食事準備の段階から労力をかけ、誤嚥の危険を帯びながらの経口摂取への介護者の努力は、「お楽しみ」の提供だけでは充分な説明がつきにくいと考える。本研究では、在宅介護者が経口摂取へ独自な意味づけが存在すると仮説を立て、質的研究デザインで研究を実施した。 研究対象者の参入基準は、1)胃ろうの原因疾患は頭部外傷と脳血管性疾患 2)要介護度4以上 3)非言語を含む患者の意思表出能力残存 4)摂食嚥下リハビリテーションを1年以上経験 5)認知症の既往なし、の条件を満たす在宅患者に対し、6)食事介助を実施する主介護者である。聞き取り調査は、6名を一堂に集め、あらかじめ研究者で定めた聞き取り内容に関する問いかけに沿いつつも、自由な発言を促すという半構造化面接を用い、2時間程度実施した。発言内容は逐語録を作成し、独立する2研究者によりすべての発言を小分けにして見出しをつけるという初期の質的研究分析作業を行い、その後両者で合意形成を行った。今年度で、17名のデータ収集を終えている。次年度は、聞き取り調査の分析と並行して、質問票による横断研究の準備に取りかかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施に先立って、関係する2研究機関での倫理委員会の承認を得た後、研究対象患者の参入基準に従い、その在宅介護者へのフォーカス・グルー・インタビューの協力者を募った。参入基準は1) 脳血管性疾患による胃ろう造設1年以上 2)非言語を含むコミュニケーション能力残存 3)要介護度4以上 4)1年以上の在宅介護 5)主たる栄養摂取は胃ろう 6)65歳以上、である。 インタビューは11月下旬に実施した。2時間程度、インタビューガイドを用いながら、できる限り自由な発言を促すように進行に努めた。ICレコーダーにて録音、逐語録を作成した。この段階で個人情報をコード化し、連結可能な個人情報保護を行った。独立した2研究者が逐語録を切片化し、すべての言語切片データにラベルをつけるという質的研究の初期分析作業を実施し、その後両者で合議形成を行ったものを分析データセットとした。 現段階では、この分析データセットを用いて、在宅介護者が摂食嚥下リハビリテーションに関して抱く意味づけに関するデータカテゴリーに注目し 言語データを詳細に記述する中期分析に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
質的研究のデータの分析をさらに進める。その分析の経過報告と共に、さらにデータ収集が必要かどうかを共同研究者と協議しながら検討する予定である。新たなデータが必要な場合は、そのケースの同定、および個人インタビューか、個別インタビューかというデータ収集方法もあわせて検討を行う。新しいデータが必要でない場合は、すでに入手したデータセットによる分析を進め、カテゴリー相互の関係性の探求や介護者による経口摂取の意味づけの概念図の作成など、 質的研究データの中期分析を進める予定である。 さらに質的研究の中期分析と並行して、調査票による横断研究の研究計画を立てる。その具体的内容としては、質的研究の結果や研究対象者の発言表現を活かした調査票の開発、調査フィールドの探索をおこなう。調査票の開発は、研究者間での議論や主研究者が所属する研究会等での研究発表の機会を利用しながら、改訂を重ねてゆく予定である。調査票が完成次第、迅速に研究研究倫理審査申請の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
質的研究のデータ収集としてフォーカス・グループ・インタビューを2回計画していたが、今年度は1回のみの開催であったため、次年度使用額への繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、情報収集を目的とした国際学会への参加を計画している。その旅費等へ使用する。また、次年度に開発する予定である調査票を用いた横断研究の実施のための事前調査やフィールド調整のための出張などを計画している。
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