研究実績の概要 |
●北海道大学病院手術部発生インシデントの解析 2003/1/1-2013/7/31の期間に2473件の手術部発生のインシデントが報告されていた。傷害の程度は一過性で、程度も軽度であるグレード2以下の事象が約8割(2035/2473)であったが、約2割が中等度以上の傷害を生じていた。ただし、報告書からのリスク因子の解析は困難であった。 ●公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業による公開データの解析 上記公開データを用いて、鏡視下手術に伴うインシデントの特徴を解析した。公開データに関して、「腹腔鏡/ロボット/ラパロ/鏡視下/胸腔鏡」の5つのキーワードで事故事例報告を検索したところ、2016年3月末時点で540件の報告が抽出された。レビュー後、腹腔鏡/胸腔鏡手術関連インシデント746件を事例報告から抽出し、報告の多いインシデント、死亡事例の特徴を解析した。術式別の比較では、腹腔鏡/腹腔鏡補助手術(L群)582件、胸腔鏡/胸腔鏡補助手術(T群)159件、腹腔鏡+胸腔鏡手術5件のインシデントを認めた。他臓器損傷(11.4%, 85/746)、異物遺残(9.1%, 68/746)、医療機器の不良/故障(6.2%, 46/746)、大量出血(5.9%, 44/746)、血管等の誤認(5.6%, 42/746)、血管損傷(4.8%, 36/746)の報告が多かった。L群/T群の比較では、他臓器損傷 (L群: 13.4%, 78/582, T群: 4.4%, 7/159), 大量出血 (L群: 3.4%, 20/582, T群: 14.5%, 23/159), 血管損傷 (L群: 2.6%, 15/582, T群: 12.6%, 20/159)で差を認めた。56件の死亡事例について、132件のインシデントを認めた。T群では出血に関わるイベントが多く観察されたのに対し、L群では多岐にわたった。
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