研究課題
本研究実績の概要は,専門医制度と連携した大規模臨床データベースであるNational ClinicalDatabase(以下, NCD)を用いて,医療の質向上に結びつく要因を明らかにし,医療の質向上を実現するためのフィードバックの革新的な手法を構築することである. 治療方針の検討においては,Evidence based medicine(以下,EBM)の考え方が広まり,国内外の様々なエビデンスを参考にして診療ガイドラインの作成が行われるようになっている.しかしながらガイドラインが現実に及ぼす影響について検証が及ぶことは少ない.本研究では,i.臨床データベースの実証データに基づいてエビデンスの検証や補完を行い,より地域の実態に即した介入指針を検討し,ii.リアルタイムフィードバックが可能である臨床データベースのプラットフォームを活用して,臨床現場が医療の質向上を実現するための医療の質改善の体制を構築する.グローバルなエビデンスとローカルな実態情報を組み合わせて医療の質改善を実現する本研究の方法は次世代型EBM の雛形となることが期待されるものである.
2: おおむね順調に進展している
初年度はNCDデータの実証分析と,臨床医との検討によりエビデデンスに基づいたベンチマーキング方法の再現性のある絞り混みの方法を検討することが出来た.冠動脈バイパス手術においては既にエビデンスに基づいたガイドラインが確立している一方で,術前βブロッカーの投与や,オフポンプ手術の採用など,国内外で推奨基準についての温度差のある臨床プロセスが存在する.βブロッカーについては,先行研究で人種差の可能性が指摘されたこともあり,日本における利用は欧米に比して消極的である傾向が指摘されている.本研究ではこれらの様々な臨床プロセスについて,日本における実施状況を把握するとともに,重症度補正分析により,選択バイアスを調整し,各種プロセスが治療成績に与える影響を検討した.また心臓外科手術を行う300手術に対してアンケート調査を行い,臨床プロセスの実態をより詳細に把握し,今後のベンチマーキング体制の構築における論点を絞り込んだ.
2年目以降においては,実証データに基づいて絞り込まれた上記のプロセス・アウトカム指標を,リアルタイムフィードバックが可能な臨床データベースのプラットフォームに実装し,臨床現場が医療の質向上を実現するための体制の構築を検討する.1)死亡例,有害事象の発生が続いた場合コントロールチャートにより,危険信号を伝える.2)推奨される術中治療,術後治療についても提示し,その実行有無について確認を行う.3)期間ごとのプロセス遵守率,リスク調整死亡率,リスク調整合併症発生率が,外れ値(外れ値の定義はデータの分布に基づいて決定)となった場合に,施設に伝える専門チームによるサポートを提供する.これら一連のフィードバックシステムを構築するとともに,臨床現場において活用状況のデータを収集し,有効に機能するための条件や改善点を検討する.また実施主体であるサポートチームに必要とされる人的・物的資源についても算出し,領域を拡大してサポートを行う場合のシミュレーションを行う.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 8件)
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