研究課題/領域番号 |
26460856
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 裕章 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (70409704)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療の質 / ベンチマーキング / 臨床データベース / ビッグデータ / EBM / 医療政策 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大規模臨床データベースを用いて、医療の質向上に結びつく要因を明らかにし、医療の質向上を実現するためのフィードバックの革新的な手法を構築することである。治療方針の検討においては、Evidence based medicineの考え方が広まる一方で、ガイドラインが現実に及ぼす影響について検証が及ぶことは少ない。本研究では1.臨床データベースの実証データに基づいてエビデンスの検証や補完を行い、より地域の実態に即した介入指針を検討し、2.リアルタイムフィードバックが可能である臨床データベースのプラットフォームを活用して、臨床現場が医療の質向上を実現するための医療の質改善の体制を構築する。グローバルなエビデンスとローカルな実態情報を組み合わせて医療の質改善を実現する本研究の方法は次世代型EBMの雛形となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究ではNCDデータの実証分析と、臨床医との検討によりエビデンスに基づいたベンチマーキング方法の再現性のある絞り混みの方法を検討することが出来た。冠動脈バイパス手術において、既にエビデンスに基づいたガイドラインが確立している一方で、術前ベータブロッカーの投与や、オフポンプ手術の採用など、国内外で推奨基準についての判断に差異のある臨床プロセスが存在する。本研究ではこれらの様々な臨床プロセスについて、日本における実施状況を把握するとともに、重症度補正分析により、選択バイアスを調整し、各種手術体制や臨床プロセスが治療成績に与える影響を検討した。分析の検討にあったては、300施設に対してアンケート調査を行い、症例情報と結合させて分析を行った。また臨床エキスパートチームと成績不良施設や優良施設を訪問し、治療成績改善にむけての手がかりを得るとともに、成績不良施設に対しては治療成績の改善に向けた指導を行った。このようにNCD心臓血管外科領域においてこれまで実施されてきた施設訪問型の教育的介入によって得られたスキームのヒアリングを行い、既存のベンチマーキングシステムを活用しながら、インターネットを介した介入をする際の対象施設の選定、対象施設がPCDAサイクルを自ら回転し、改善に取り組むことを可能とした新しいベンチマーキングシステムを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでに開発された新しいベンチマーキングシステムを用いた教育的介入機能の運用を、臨床学会が主体となって開始し、継続可能なシステムとして活用することを目指す。また本システムの効果を検証し、臨床学会が主体となり医療の質向上に向け臨床現場をサポートできる手法の確立を図ることを目指す。具体的な手順としては、リスク調整分析とエキスパートボードの検討により選定した治療成績に課題を抱える施設に対して、学会で選定した専門家2名を1チームとして、1チームで月ごとに1~2施設を目安に教育的介入を実施する。各対象施設に対する専門家の割り振りは各学会にて実施する。教育対象施設は、ベンチマーキングレポートの参照し、治療成績の課題の同定を行い、改善に向けた計画を作成する。各専門家チームは、対象施設から提出された改善に向けた計画の実現可能性を検討し、必要であれば計画の練り直し等を促す。各専門家チームは対象施設の改善計画の進捗を把握し、必要時計画の修正等を行う。複数のチームで共通する事項や共有の必要がある事項に関しては、チーム間で情報共有する。 これらの取り組みについて、取り組みのインパクト評価とアフターフォローコンサルティングの実施も行う。コンサルティングを通して構築した教育プログラムにて計画された治療成績の改善計画の効果の検証を実施する。介入した施設のリスク調整死亡率や施設規模を考慮し、治療件数に応じて半年後又は1年後の治療成績の改善評価を行う。各専門家チームは対象施設の改善計画の進捗を把握し、必要時計画の修正等を行う。これらの取り組みを踏まえ、専門家によるコンサルティング実施する。治療成績が改善した取り組みについては施設名を匿名化したうえでベストプラクティスとして共有できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗から、次年度を支出タイミングとする方がより最適と判断した為
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度使用予定であった経費の残額は、当初の予定であった旅費として349524円、また、その他として535200円を使用予定とする。また、今年度配分経費としてその他で300000円を使用する計画である
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