研究課題
本研究の目的は、大規模臨床データベースを用いて、臨床の質向上に結び付く要因を明らかにし、医療の質向上を実現するためのフィードバックの革新的な手法を構築することである。初年度は、既にエビデンスに基づいたガイドラインが確立している冠動脈バイパス手術において、術前βブロッカーの投与やオフポンプ手術の採用など、国内外で推奨基準についての温度差のある臨床プロセスの日本における実施状態を把握するために、300施設にアンケート調査を行うとともに、National Clinical Databaseのデータと結合し重症度補正分析を行い、各種プロセスが治療成績に与える影響の検討を行った。また、臨床エキスパートと治療成績の不良施設及び、優良施設を訪問し、治療成績改善の手がかりを探索し、改善に向けた指導を行った。2年目は上記スキームを踏まえ、臨床現場が医療の質向上を実現するための体制として、既存のベンチマーキングシステムを活用し、自らの治療成績から課題の同定を行い、PDCAサイクルを回転させながら、医療の質向上に取り組むことを可能とした新しいベンチマーキングシステムを構築した。最終年度は、構築したシステムを活用し、臨床エキスパートが治療成績に改善を要する施設へ教育的サポートを実施した。治療成績に課題のある施設には、不十分な術前検査、過剰な手術適応、不適切な術後管理方法、職種間のコミュニケーションの課題等、共通される課題が抽出された。また、既存のアウトカム指標によるベンチマーキングに加え、治療が長期間にわたる臨床領域に適した、プロセス型のベンチマーキングを乳がん領域にて開始した。大規模臨床データベースの分析を活用し、プロセス型のベンチマーキング手法及び、ベンチマーキングを基にPDCAサイクルにつなげる教育的指導手法2種類の手法を次世代型EBMの手法として構築することができた。
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