研究課題/領域番号 |
26460860
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浦田 浩一 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70324267)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 手術合併症 / ビッグデータ / 深部静脈血栓症 / 褥瘡 / 医療経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、手術部で蓄積された手術症例のビッグデータを解析し、深部静脈血栓/肺梗塞症(DVT/PE) や褥瘡といった術中・術後合併症の危険因子を特定し、術前から合併症予防を強化するモデルを確立することにある。 2005年1月から2011年3月までの当院で手術を施行した33,106例を対象に手術部電子化システム内のサーバーに蓄積されたデータを基に、DVT/PE、褥瘡の発生率、要因について解析を行なった。DVT/PEは105例(0.31%)で生じており、単変量解析で有意となった因子で多変量解析を行い、女性(オッズ比2.11)、60才以上(オッズ比1.95)、BMI30以上(オッズ比4.06)、手術時間2時間以上(オッズ比2.30)、全身麻酔(オッズ比3.04)、整形外科手術(オッズ比5.06)、緊急手術(オッズ比3.27)、DVT/PE既往(オッズ比39.09)の8項目でDVT/PEの発生率に有意差を認めた。またDVT/PE予防対策開始前9,907例と対策開始後23,199例で危険因子を比較すると、7項目を満たす症例が対策開始後に有意に増加していたにもかかわらず、DVT/PEの発生率は有意差を認めなかった。 手術中褥瘡発生の危険因子を2008年4月~2012年3月までの23,503例を対象に危険因子の解析を行った。褥瘡は235例(1.0%)で発生し、単変量解析で褥瘡発生群に有意に多かった因子で、多変量解析をおこなった。身長(オッズ比1.03)、17才以上(オッズ比3.02)、脳神経外科手術(オッズ比4.26)、心臓血管外科手術(オッズ比3.81)、腹臥位(オッズ比8.38)、手術時間2時間以上(オッズ比3.25)、出血500ml以上(オッズ比1.73)の因子7項目で褥瘡発生に有意差を認めた。 手術に関連したDVT/PEおよび褥瘡発生の相対的危険因子が概ね示唆された。今後、危険因子を考慮しての術前からの各診療科や周術期管理チームとの連携を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2014年9月に、病院全体および手術部の電子カルテの更新が行われ、過去のデータ解析システムに不具合が生じている。このため、DVT/PEおよびの危険因子の解析がやや遅れている(2012、2013年度分)。また、手術合併症(深部静脈血栓症/褥瘡)患者の入院期間中の物品/薬剤費用等の医療支出計算の抽出に時間を要しており、経済的効果の解析が遅れている。過去のデータ解析システムの改善と共に解析を早急に進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
手術に関連したDVT/PEおよび褥瘡発生の相対的危険因子がおおむね示唆されたが、データ解析システムの不具合の改修後、対象症例を2年分増加し相対的危険因子の解析精度を高めていく。 また、危険因子を考慮し、術前から各診療科や周術期管理チームとの連携では、予防策やガイドラインの見直しが必要となる。病院の医療安全担当委員への理解を進めていく。 また、手術合併症(深部静脈血栓症/褥瘡)患者の入院期間中の物品/薬剤費用等の医療支出計算の抽出には、病院医事課に協力を求める必要がある。これらの解析を行い、医療経済への影響を評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、既存のコンピュータシステムおよびサーバーを仮運用し、データ解析を試験的に進めた。当初計画していたコンピュータシステムおよびサーバーの購入を次年度に延期したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
病院および手術部の電子カルテシステムが平成26年9月に更新となり、新たなデータ抽出と解析には、研究初年度に予定していたコンピュータシステムおよびサーバ等が不可欠である。次年度使用額は、H27年度請求額と合わせて、コンピュータシステムおよびサーバーの購入や研究成果発表として使用する。
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