研究課題/領域番号 |
26460860
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
浦田 浩一 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70324267)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 手術合併症 / ビッグデータ / 深部静脈血栓症 / 褥瘡 / 再手術 / 手術時間の延長 / 医療経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、手術部で蓄積された手術症例のビッグデータを解析し、術中・術後合併症の危険因子の特定、術前から合併症予防を強化するモデルの確立、最終的には医療費削減への指針を示すことにある。 手術部に蓄積された2万~3万手術のビックデータの解析から、手術関連で発生する部静脈血栓/肺梗塞症及び褥瘡発生の危険因子を解析し、手術術前から各診療科や周術期管理チームとの連携を試みている。褥瘡については、脊椎後方手術時の腹側4点支持による褥瘡予防の試みにフォーカスを当て、除圧資材の違いや診療科の協力で、予防コントロール群(n=211)に比べ予防群(n=168)で褥瘡発生率が有意に減少(-13%)した。一層の工夫で予防を試みていく。システム不具合により遅延していた2012年度以降のデータ解析の追加及び、合併症発生患者の物品/薬剤費用、入院延長に関する医療費算出のデータを収集し解析を進めていく。 前述の合併症の発生にも関連し、手術部運営上の慢性的課題でもあり、また病院経済に大きく影響する問題として「再手術」および「手術時間延長」の問題が挙げられる。これらについても手術部ビッグデータを用いての解析を試みた。約1年間6400手術のデータからは、再手術となる有意な危険因子は、複数科合同手術(オッズ比:OR 4.6)、緊急手術(OR2.3)、3時間以上手術(OR2.1)、出血200ml以上(OR1.9)、予定超過手術(OR1.8)であった。 また3時間以上の手術時間延長を生じる有意な因子として、準緊急手術(OR 4.0) ,夜間帯終了(OR 5.6),出血5 L以上(OR 9.5),手術10時間以上 (OR 15.0)などが挙げられた。いずれも 複数年のデータ解析をさらに進めていく。これらの問題についても危険因子が事前に予想される場合の取り決め等、各診療科との連携と工夫を今後進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
深部静脈血栓症/肺梗塞、褥瘡の2012、2013年度分の因子解析と患者の入院期間中の医療支出計算の抽出に時間を要し、経済的効果の解析が遅れている。過去のデータ解析システムの改善と共に解析を早急に進めていく。 一方で、褥瘡予防の試みを資材の変化で試みており,一定の効果を得ている。 また、手術部ビッグデータを用いて、「再手術」や「手術時間の延長」など医療経済や手術部運営に関与する問題の統計的解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
手術に関連した深部静脈血栓症/肺梗塞および褥瘡発生の相対的危険因子がおおむね示唆されたが、追加解析2年分の危険因子の解析を高めていく。また手術を受けた患者の入院期医療支出計算の抽出を行い、上記合併症の経済的損失を明らかとする。 また、危険因子を考慮して、現在、各診療科と連携し予防策を試みている。症例を増加し効果を判定する。 一方で手術部ビッグデータを用いて、「再手術」や「手術時間の延長」など医療経済や手術部運営に、関与する問題の統計的解析をすすめている。 これらの解析、合併症予防への工夫、経済的効果を統計的に評価し、手術部運営の具体的な指針を確立していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析用PCの購入更新を考えていたが、Windowsのメインシステムが更新される時期とあいにく重なり、やむを得ずPCの更新を一旦延期した。合わせて、追加モニターやHDD等の周辺機器、更新ソフト等の購入も延期したため、物品購入額が抑えられる形となった。この時期、作業内容のシフトを行い、比較的小さなデータの解析で進めることができるテーマの研究をすすめ、既に解析が終了している内容の結果報告や論文作成を行ない、これにかかる費用は増加した。
|
次年度使用額の使用計画 |
28年度早期から、一旦延期していたPC及び周辺機器を更新する。解析作業を増加するため、電子媒体や印刷等の消耗品費は増加し、効率よく作業をすすめるため研究補助費を要する。褥瘡研究の測定機器を他部門から借用していたが、新たに購入更新する。研究最終年であり、研究報告のため、旅費や論文作成費、投稿費、印刷費等が増加する。
|