研究実績の概要 |
本研究の目的は、手術部で蓄積された手術症例のビッグデータを解析することで、術中・術後合併症の危険因子の特定、術前から合併症予防を強化するモデルの確立、最終的には手術部運営上の観点から医療費削減への指針を示すことにある。 手術関連で発生する深部静脈血栓/肺梗塞症(DVT/PE)は、手術部ビッグデータの危険因子の解析から、手術術前から各診療科や周術期管理チームとの連携を構築中である。術前診察や訪問の重要性が明確となり、麻酔科医師と看護師との連携を進めDVT/PEの発生を抑制したい。 術中に発生する褥瘡は、脊椎後方手術時の腹側4点支持による褥瘡予防の試みでは褥瘡発生率は有意に(13%)減少した。さらなる術中の工夫が必要である。 手術部運営および医療経済上の問題として「再手術」および「手術時間延長」についてビッグデータの解析を行い、「再手術」となる危険因子として、複数科合同手術、緊急手術、3時間以上手術、を特定した。また、 3時間以上の予定超過手術となる因子として、準緊急手術, 夜間帯終了,出血5 L以上, 手術10時間以上を特定した。危険因子が事前に予想される手術の取り扱いやスタッフの準備、各診療科との連携と工夫を今後進める。外科系診療科全体での手術枠再編の協議を進めている。 ビッグデータによる解析から試算されるコスト削減は、手術時消耗品の見直し/再編から試験的に行い、年間約1700万円の削減効果と、看護師の離職率の減少を得た。今後の課題として、合併症患者の薬剤費用、入院延長に関する医療費算出のデータを収集し解析を進めたい。
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