本研究の目的は、感染制御ネットワークを活用し、院内感染対策の専門家が不足しがちな中小病院での感染対策の現状(日常の耐性菌検出・手指衛生率・医療機器関連感染などのサーベイランスの実施活用の有無、医療従事者の感染対策に関する知識・態度・行動)を調査し、効果的な介入を行い、その指標として各施設の耐性菌検出率の推移や医療従事者の感染対策のための行動変容の有無について調査を行うことである。パイロットスタディとして感染防止加算連携施設19施設の新入職者に対してアンケート調査とアルコール手指衛生遵守率を調査した。結果は調査当初と比較して流水石鹸による手洗いよりもアルコールによる手指衛生が重要であると意識が変化したことがうかがわれた(30%→48%)、また流水石鹸よりもアルコールの方が気を減らせると回答した職員が55%→70%と増加した。 また協力施設のアルコールによる手指衛生回数は2014年4~5月期には2.7回/患者・日であったが、2015年10月~12月期には5.1回/患者・日と上昇がみられた。アンケート調査による意識向上とそれによる感染対策担当者による啓発活動がアルコール手指衛生回数の上昇と関連しているかもしれない。一方、耐性菌サーベイランスでは大きな変化はみられず、時間を要すると考えられた。
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