研究課題/領域番号 |
26460867
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石河 隆敏 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (00343351)
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研究分担者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20240905)
宇宿 功市郎 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (30281223)
別府 透 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (70301372)
松井 邦彦 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80314201)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医学部教育 / 医学生 / 参加型臨床実習 / 外科系臨床実習 |
研究実績の概要 |
本研究では近年比重が高まりつつある学生参加型実習における医学的、社会的容認を得ることを目的としている。この研究期間内の社会情勢からも、特に侵襲の高い外科手術のoutcomの検討により実習参加による非劣性のevidenceを得る必要性は極めて高くなった。リスクマネージメントがより適性に求められ、これに呼応して昨年から全国国立病院長会議での臨床実習に対する学生の医行為の見直しが始まっている。当医学部でもstudent doctorの導入開始を決定し、医行為に関する見直しが図られ、研究当初に策定していた実習レベルについては見直しを行うこととなった。学内アンケート調査をもとにこれまでの推奨レベル再検討と医行為の可否について再度検討を加えた。今後は新たな基準で手術参加を行うとともに、データ管理についての臨床研究基準を満たす計画案の追加を行なった。 昨年度はこれまでのデータをもとに学生、研修医など多くの教育体制を抱える大学病院での手術outcomeについて教育時期の経時的な影響に着目した研究結果をまとめた。実習期間の外科分野での臨床成績アウトカムについて、傾向スコアを用いたマッチング分析により検討したこの研究「教育病院における臨床実習期間と外科手術成績」は昨年の第48回医学教育学会に採択された。この中で26の手術背因子を用いた傾向スコアからの分析で医学生の臨床実習期間/非実習期間の両群間で高難度手術の手術成績を検討した。その結果マッチ症例の比較で両群間のp値は短期の治療成績では0.5以上で有意差がなかった。このような治療成績の非劣性の検証が学生参加の社会的acceptabilityに必要なデータとなりうることを主論としたが、この認識の重要性については多くの参加者から賛同を得ることができた。研究周辺情勢への対応が様々な形で迫られた年度であったが、一定の成果を発信できた研究成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
この研究期間内の社会情勢から侵襲性の高い外科手術のoutcomeについては非常に多くの関心がよせられることとなった。特にリスクマネージメント管理の側面がクローズアップされ、当院内でも新たなルール作りが昨年度以降進んでいる。これに加え、全国国立病院長会議での臨床実習に対する学生の医行為の見直しが始まり、当医学部でもstudent doctorの導入の決定とともに、カリキュラムにも大きな変更が図られることとなった。本研究開始時に策定していた実習レベルについては見直しを迫られることになり、学内アンケート調査をもとに再度基本となる術野参加の基準見直しを行っている。これらの制度変更や院内規範の刷新、その適応により当初計画を見直すこととなり、時間を要したことは前年度研究の遅れの一因である。また、熊本地震による一定期間の学生実習の休止や地域の医療情勢の提帯等不足の遅延がソフト面、ハード面にともに作用し、対応遅れに繋がった側面は否めないところである。
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今後の研究の推進方策 |
本来最終年度の目標であった参加型実習の手術成績に関するエビデンス作りを残りの期間で進める。今年、平成29年3月に「国立大学医学部における医学教育の指針」が国立大学医学部長会議からの新たな提言として示された。手術実習参加についてはリスクマネージメントの観点も含め、本年4月に一定の見直しを行なった所であり、改革途上であるこの分野では指針の変更などの参加形態についても変遷があるので、これまでの集積データも活用するための共変量の均てん化が必要であり、傾向スコア propensity score (PS)を用いた比較解析の検討を現状では進めているところである。また個人情報のデータベース化については臨床研究の指針や本年5月の個人情報保護の改正に基づく慎重な取り扱いが必要であり、病院間でのデータやり取りには、さらに施設毎に慎重な対応で臨む必要がある。これについては院内個人情報保護の体制が各施設で整い次第、その規約に則って匿名化情報を収集、解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の見直しおよび、熊本地震による一定期間の学生実習の休止や地域の医療情勢の提帯等不足の遅延により、研究計画が当初計画通りに進まなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費の大部分は参加型実習の手術成績に関するエビデンス作りを残りの期間で進めるため、必要物品の購入経費に充てる予定である。
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