研究実績の概要 |
本研究は医学研究における多目的・長期的な包括的同意を支える“信頼”について社会心理・社会哲学的視座から概念構造を整理し,信頼関係を軸とした医学研究参加のためのInformed Consento及び研究参加の意思表明(同意)のベストプラクティスを集約し,医学研究従事者へ還元するまでを目的に取り組んだ.医学研究では人体から切り離した組織あるいは細胞の取り扱いを,長期的に研究者へ一任するため, 試料・情報提供者(以下,被験者)からの信頼を継続的に維持することが至要であり,研究に参加協力してくれる被験者の任意性を担保しつつ,試料提供の同意を受ける.このICの手続きが今後の研究の進展にも大きく影響をもたらすことから極めて重要である.そこで,医学研究への参加を促すICの実施上の問題を明らかにし,医学研究におけるICのベストプラクティスを探すことを試みた. 研究協力に影響を与える因子として,第一に「疾患の種類・重症度及び予後」, 「文化背景」,「宗教的見解」と続き,次いで「医師との関係」,「医療全体に対する考え方」の順に影響を及ぼすことを『Guide to Clinical Trials』の中で示している.自分の身体の一部と情報の行方を知らされることもないため,濫用の懸念もあり,プライバシーの問題も内包する.こうした不確実な状況で,法による下支えのないまま,参加者に役割意識と覚悟を持って研究に参加してもらうには,具体的でわかりやすい説明は勿論のこと,協力を依頼する医師(研究者)を信頼してもらうほかなく,本邦においては研究参加への同意取得に最も影響をもたらす因子は「医師との関係」であることが示唆された. 今回の調査において集積した資料を引き続き解析を行い,研究参加の同意を支える“信頼”について社会心理・社会哲学的視座から概念構造を考案・提示し医学研究従事者へ還元する予定である.
|