研究課題/領域番号 |
26460873
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
臼井 聖尊 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80567884)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フローインジェクション分析 / QuEChERS / 薬毒物分析 |
研究実績の概要 |
薬毒物を用いた犯罪は,解剖や死亡時画像診断のみで認知することは難しく,薬毒物検査の確実な実施が必須である.しかし,警察が扱う全ての死体に対して検査を実施するには,膨大な時間と労力が必要であり,現状の分析体制では困難である.そのため,改良型キャッチャーズ(QuEChERS)法とフローインジェクション‐タンデム型質量分析計(FI-MS/MS)を組合せて,薬毒物の抽出から結果報告までを10分程度で完了させる迅速な分析法を開発することが本研究の目的である. 本年度は測定時間の圧倒的な短縮を目指すため,カラムによる分離工程を排除したFI-MS/MS法の条件設定に着手した.具体的には,質量分析計における (1) 各薬毒物のプリカーサーイオンQ1とプロダクトイオンQ3の選択,(2) 取込み速度,(3) プロダクトイオンの取込み時間,(4) サーベイスキャン時のイオン取込み時間等を設定した。なお、全体の測定時間は1分析あたり1.5分以内に調整した.FI-MS/MS法では,QuEChERS法で抽出された全ての化合物が質量分析計に導入されるため,内因性物質によると思われる偽陽性が多数発生した.この偽陽性を抑えるため,得られた質量スペクトルから内因性物質を同定しライブラリーに登録した.さらに同定に至らない化合物であっても未知化合物としてライブラリーに登録することで偽陽性を大幅に減らすことができた.現在は従来法であるLC-MS/MS法との比較検討を行なっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、基本となるFI-MS/MS法の条件設定である。そのため、試料を繰り返し分析して最適値を求めた.具体的には、(1) 約200種類の薬毒物のプリカーサーイオンとプロダクトイオンの最適化,(2) 各イオンの取込み速度の設定,(3) イオン取込み時間の設定, (4) 偽陽性の要因となる内因性物質の同定とライブラリー登録,(5) その他(スペクトル取得のトリガー条件設定,ライブラリー検索の条件設定など)を行なった.その結果、ライブラリー検索時の偽陽性、偽陰性を大幅に減らすことができ,研究全体としてみればおおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,前年度に設定したFI-MS/MS条件を用いて試料を分析すると同時に,同一試料を従来法であるLC-MS/MS法でも分析を行う.開発した分析法と従来法の分析結果(定性能)を比較して,その有効性を評価する.定性結果の比較は,3つの類似性指標を用いて評価する.すなわち,ジャッカード係数,ダイス係数及びコサイン係数を算出し,客観的に比較検討を行なう.2つの分析法における一致率が低い場合,偽陽性又は偽陰性が原因であるため,その発生原因を考察する.現在までのところ,研究計画の大幅な変更はない.
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